集団と個人
ドラッグに身を任せ、街を歩く。季節は夏。夏休み前。ただし接頭語は憂鬱なだ。
受験を控えた夏休み。既に予定は塾の夏季講習で埋まっている。そんな予定を頭の中からかき消すようにドラッグを入れたのがさっき。キマって来たのが今。
「あー、うるせえな」
カナカナとヒグラシが鳴いている。夕焼けから夕闇に変わる時間帯を一人歩く。
目的も無く、いや歩くことを目的として、自動的に歩く。
(……通学路、か)
登校班を作り毎日集団で登校している日常、しかし来年からはそれも変わり電車通学となるだろう。
集団登校始めの頃は、学校に行きたくないと親に駄々をこねたものだった。泣きながら学校に通う中、登校班の上級生によく慰められたことを覚えている。
そして友達と帰りながら、鬼ごっこやケイドロをして遊び、家族でテレビを見ながら夕ご飯を食べ、疲れて眠りにつくルーチン。
——今はと言えば、集団を無視して一人で本を読みながら登校。一人で帰り、そのまま塾に行く。
塾が終われば一人で帰り、夜遅くなってから家についたら、ラップしてあるご飯をチンして夕飯を食べ、お風呂に入り、そのまま就寝。その繰り返し。
どちらも物語になり得るような意味など無かったが、あるいは後者の方が社会的な意味はあったが、なせだか意味のない前者の思い出の方が自分には大切だったようにも思う。
(……なんで考えてんだよ)
せっかくキマってる良い気分が台無しで、とにかく何も考えたく無くて、持ってきたカプセルを勢いで喉に流し込んだ。
透明なカプセルに白い粉末を入れたお手製の薬をごくりと嚥下する。
「はー……」
一般的な容量の二倍だが、せいぜい二倍。桁が変わるほどではない、問題ないだろう。
初めての経験に少しワクワクさえして、少し楽しくなってきていた。
(学校まで行くか……)
少し浮き足立って、学校に足を向けた。




