警告
「ちょっと」
放課後の教室、一華の待つであろう屋上階段へ向かおうとした時、声をかけられた。
名前は覚えてないが、班長なりクラスの委員なりをやっている、優等生だった。
邪魔をされたことにムカついて、ぶっきらぼうに返事をする。
「なんだよ」
すると奴はポケットから何かを取り出す。
「これ——知ってるよね?」
それは——小瓶に入ったキラキラした結晶だった。
「——返せよ!」
それをぶん取る。
知られた。 なぜ? どこで? 焦燥感が募る。
「別に脅しに来たんじゃない。下手にやらない方が良いことを、伝えに来ただけだよ」
淡々とやつは言う。
こんなことをして、ふざけたことを言うんじゃないと言いたかった。
「面倒なことになって欲しく無いから。と言っても、別に君の心配をしている訳じゃないんだ」
奴はスカした感じで話をする。
人に——心配なんてされたくない。
「ただ一つだけ忠告しとくよ。セキュリティの観点で言えば、他人に知られた時点で、それは制御不能になる」
まるで僕と一華との関係を知っているかのような口振りだった。
ただ——さすがにボロは出していないはず。
「例え君がいくら気をつけようとも、その物質や情報は、君の管理下に置かれない」
念を押すように奴は言う。
「だから……なんだよ?」
回りくどい言い方に先を促す。
「もしかしたら君は分別があるかもしれない。上手くやれるかもしれない。けれど他の人間はどうかな?」
一華のことを言われた気がしてカッとなった。
「お前には分かんないだろ!」
「そりゃ分かんないよ。分かんないけどさ、でも君も他人のことは分からないだろ」
「俺は——分かる」
希望を込めてそう強く言った。
一華のことは、分かりたい。分かっている自分でありたい。
「……そう。なら、いいけどね」
奴はそう言うと、手をひらひらとさせてどこかに行ってしまった。
——なんなんだよ。本当に。
僕は足早に一華の元へと向かった。




