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甘えと受容

 僕たちは昼休みと放課後、毎日会うようになっていた。

 ただ——会ったからと言って、何か話をするだとか、遊んだりだとかする訳では無い。

 

 彼女の薄いくちびるに、僕の人差し指をのせると、彼女はそれをくわえた。 

 

「……はむ……ちゅっ……」

 

 膝の上にのっている彼女のあたまをゆるゆると撫でる。

 僕たちは哺乳類同士の毛づくろいのような、ゆるい接触ををただただ互いに繰り返すだけ。

 

 ふわふわと香るのは、彼女の匂い。なんだか安心するような、衣服と汗とミルクとわずかな柑橘が混じったような、親しみやすい匂い。

 

 薬をやっていないのに頭の中がじんわりと心地よい。元気が出るような。

 

「……こうたい」

 

 ぼーっとした目で彼女が訴えかける。その目に少しどきりとする。何だか、不思議な感じだ。

 彼女の身体を起こし、今度は僕が彼女に膝枕される形になる。後頭部に彼女のまだ成熟していないふとももの感触を感じる。

 

 目を瞑ると、ゆっくり頭を撫でてくれる彼女。彼女の言うこれが()()()()()ということ。

 

(——!)

 

 口に指が突っ込まれた。少し乱暴だが、そのぎこちなさも彼女といえば彼女らしい。

 塩と汗の味がする。表皮を感触を味わうように舐める。

 

 ここで一つ学んだのは、案外人と人の交わりも、心地よいということ。

 ——もしかして、これは()()()()と一緒にやれば、より気持ち良いのでは?と確信した僕は、彼女に一つ提案を持ちかける。

 

「あー……」

 

 名前を呼ぼうとした、呼ぼうとしたが、名前を知らなかった。

 僕に舐められた指をしゃぶる彼女に問いかける。

 

「名前、なんだっけ」

 

 ともすれば怒られそうなものだが、彼女はぱっと明るい顔になって言う。

 

「いちか。数字のいちに、華やかのはな」

 

 空に指を走らせて、こうだったかなと文字を思い出す。後ろの文字は書けないが、まあいいだろう。

 

「いちか、日曜日なんだけど——」

 

 という僕に、彼女は目をきらきらさせて、食い気味にうなずいた。

 

「なんだけど——まぁ、いいか。じゃあ、あの時と同じく、裏庭で」

 

 彼女の反応を見て、僕の方が恥ずかしくなってしまった。手をひらひらささえ言う。

 

「ぜったい、いくよ」

 

 当の彼女は大真面目で、それもなんかおかしかった。

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