秋葉原ヲタク白書36 ラストプリンセス
主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。
相棒はメイドカフェの美しきメイド長。
この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第36話です。
今回は、前回メイド長とコスプレバトルを繰り広げた金髪メイドを推す老ヲタクが実はアフリカ小国の元大統領と判明。
元大統領を国外追放としたクーデター政権が秋葉原にスパイ団を送り込み、元大統領の誘拐を試みますが…
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 カレー配送アプリ
「テリィたんは、カレーが好きなのか?」
男で僕を「たん」付けで呼ぶ人は彼だけだ。
中央通り沿いのタワーマンションの最上階。
僕は、億万長者のトロイさんに呼ばれてるw
「えっ?カレーですか?うーん、特に好きと逝うワケでもナイなぁ。何で?」
「ドリィがこの前、テリィたんが美味しいカレー食べたさに彼女を"週末プロレス"に出した、って聞いたモンだから」
「ああっ!ソレか!ソレには深い、不快、深ーいワケがあるんだにょ。しかし、ウルトラ人聞きが悪いな、その逝い方」←
タイミングよく金髪、長身、グラマーの American sweet heart がメイド服で登場。
何と逝うべきかホントに迷うが、この最上階にトロイさんと2人で住んでるドリィだ。
つまり愛人だょね←
うらやましーよー笑
「テリィたん、ミユリをプロモーションに売り飛ばしたトコロの人。アキバの奴隷商人的な存在と崇める」
「崇めるなっ!ソレに、僕は奴隷商人とは違うトコロの人アルょ!ドリィ、日本語学校を変えろ。悪いコト、逝わないから」
「実は、僕も他校を薦めてルンだけど、今の学校が、仲間が多くて気に入ってるらしい。色んな国の人と友達になれるんだって」
ドリィは昼は御屋敷でバイトし日本語学校に通い、夜は"コスプレバトル"のバトラー。
ダラス・カウガールスのコスプレで大和撫子バトラーと毎晩壮絶な闘いを繰り広げてる。
double work, triple workは当然のアキバ、睡眠時間4時間で夢を追う…って君の夢は何?
「実はさ、テリィたん。あくまで、ハイパーローカルデリバリーだけど B2B のビジネスモデルを BtoC にシフトするオンデマンドデリバリーアプリを考えてる。どう思う?」
「え?ええっ?な、何が"どう"なの?考えも何も、話してるコトが意味不(明)!」
「あはは。tranceportation & logistics だょ。わかりやすく逝えば、オンライン食品配送サービス、もっとわかりやすく逝えば、カレー配送アプリだ。君の意見が欲しい」
うーん。やっぱりワカラナイw
トロイさんは、スタートアップをいくつも手がける"起業家魂の塊"みたいな人だ←
ドリィが参戦してる"コスプレバトル"のプロモートはじめ様々な分野で荒稼ぎ中w
どうやら、今回は、アキバの隣町の神田に密集するカレー屋をネットしている彼の物流網をアキバまで広げたい、と逝う話のようだ。
元はカレー屋同士で食材を安く共同購入したり融通し合うためのアプリだったが、対象を消費者、つまり客にまで広げたいとのコト。
アキバには神田のカレー屋より多くの御屋敷があり、ソコに眠る膨大なカレー需要と神田カレー街を結ぶと逝うのが基本コンセプト。
古くは@の"大ちゅきカレー"とかヒナホアの"カレーらいちゅ"は全部手作りでアキバの食材店にメイドが買出しに来てたモノだ。
御屋敷毎にレトルトカレーも物販してたが、キッチンメイド自体が日陰の花と逝う面もあって店毎に"人気の味"とは中々ならない。
ソレが"神田カレーグランプリ"級の味ともなれば、特典欲しさに日に何杯も食べるヲタク達にとっても、朗報となるのではないか。
カレー屋の売れ残り防止にも繋がって地球にやさしいビジネスモデルとも逝えそうだ。
「キッチンメイドがアプリを立ち上げると、直ちにGPSが起動、その日の神田カレー各店の在庫(前日の売れ残りw)と販売単価がわかり、クリック1つで15分以内にルーが届く」
「御屋敷では、独自の味付けなどを施し、後は温めるだけで、いつでもサーブ出来る」
「おおっ!コレでメイド服のまま、ジャガイモの皮むきとかやらズに済むコト、いと嬉し。アプリの完成、待つの人達は私達」
居合わせた3人は、まるで世紀の大発見をしたかのように興奮する。
アップルコンピュータ第1号が完成した時のガレージもこんな感じ?
「この物流モデルの強みは、倉庫、いや在庫そのものを持たないコトだ。食材配送で蓄積した生鮮品デリバリーのノウハウも使える。決済もキャッシュオンデリバリーにしよう」
「携帯アプリの強みを存分に発揮出来る。カレーなら確実に毎日オーダーが入る。カレーがメニューにない御屋敷なんて聞いたコトないし」
「コレならキッチンメイドも毎日"プリンセス"気分でお仕事ね」
おぉ。だんだん凝った逝い方も出来るようになったね、ドリィ。
第2章 老害
ドリィの件らしい。
ひろみんが来てる。
ひろみんは、既婚で子持ちだが政府のカワイイ大使も務めるアキバで働く女子の頂点。
今宵も僕の推し(てるメイドの)ミユリさんがメイド長を務める御屋敷は大入り満員だ。
太陽系の果てでハートを見つけた偉業に敬意を表し"冥王星探査機バー"とも呼ばれる。
「ミユリ!見たわょ"MY TUBE"!派手にバトルしてたじゃない!さっき見たら、もう10万回再生だったょ!サスガは昔取った杵柄?新橋のビアガーデン時代を思い出すね!」
「全然、思い出さないからっ!国営放送で自分が過去バレしたからって、友達まで巻き込まないで頂戴w」
「で、ミユリとバトルしてたハーフの子、えっとドリィちゃんだっけ?ウチに来たわょ。即採用で、もうショーアップ(御屋敷に出るコト)してるけど」
"MY TUBE"は、大手の画像投稿サイトでミユリさんvsドリィのゲームをはじめ多数の"コスプレバトル"が続々UPされている。
「えっ?ドリィが@にいるの?@のメイド服、似合ってる?アンミラみたいなバスト強調服ならいいのに!で、ドリィのシフトは?」
「あーらテリィたん、気になるの?@はプレミアムメイド以外はシフトは非公開だから会えるまでドンドン通って頂戴ね。気になるの?ミユリをギブアップ寸前まで追い込んだブロンドのチアリーダーが」
「あのね!全然余裕だったから。責められてナンボのゲームなの、アレは。でも、テリィ様とか何かヤタラと楽しそうだったし。私がドリィに捕まってた時とか」
カウンターの中でミユリさんが口をスボめてスネる(フリ)と、ヘルプのつぼみんがスゴい形相で僕を睨むwあ、あれ?僕はピンチか?
「で、で、でも、10万回なんて、スゴい再生回数だょね。もうミユリさんもドリィも、そこらのMYTUBER(動画UPで食べてる人)そこのけの人気者ってコトだ。立派なメジャーデビューだね。おめでとう!」
「だ・か・ら!私は"コスプレバトラー"としてデビューなんかしてません!私はメイドです!有名になろう、とかメジャーになりたい、とか全く思ってナイから!でも、1ヲタクとして、ドリィちゃんのメイド姿には萌えるwねぇ、シフト教えてょ。ひろみん」
「あちゃ。そう来たかwまぁミユリに逝われたんじゃしょうがないなー。明日の遅昼(14時〜)だったかな。ノンキ店だけど」
"ノン・キホーテ"は総合ディスカウントスーパーの大手で、@は秋葉原への進出に際し1号店をノンキ秋葉原店内に出店している。
「でね。ドリィちゃんだけど、MYTUBE効果もあって、早速人気者なのょ。他のメイド推しだったヲタク連中も続々"推し変(好みのメイドの乗り換え)"しちゃって、実はちょっち波風も立ってルンだけど…まぁソレはしょうがないね、人気商売だから」
「あぁ。ヲタクに限らず、金髪長身グラマーと3拍子揃えば男は直ぐにメロメロなのょ。ホント情け無い。今や時代は、私達アジアンビューティーなのに」
「あ、そうそう。実は、ドリィちゃんに"老害"が付いたのょ。ソレもかなーり変わった"老害"。ホントはそこら辺もミユリ達に見て欲しいンだ。なかなか御立派な御主人様ナンで迂闊に出禁とか出来ないし。まぁソレほど迷惑になってないから、構わないと逝えば構わないのだけども」
"老害"とは、上から目線の老ヲタクが現場を荒らすコトで…あ、ヲタクに限らないかw
「今の若い奴は…」とか「俺の若い頃は…」とか逝う爺さん…あ、ヲタクに限らないね笑
ドリィに絡むのはどんな嫌な奴だろう?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
身なりのいい紳士だw
翌日、早速久しぶりの御帰宅とハヤるミユリさんを連れ@に御帰宅。
社長メイドのひろみんが御給仕中でごった返しており、約10分待ち。
入り待ちの行列は、外階段までハミ出て並んでて、まぁ多分半分くらいは外人さんだ。
すまなそうに呼びに来たメイドさんに連れられ御帰宅すると、中は大賑わいの大混雑。
奥のボックス席では、陽気な黒人客が元気に「萌え萌えシャカシャカ」とか叫んでるw
その間を縫うようにして御給仕しているドリィが僕を見つけて、パッと顔を輝かせる…
と思ったら、後で聞くと単にミユリさんに反応しただけ、とか逝われちゃって笑
やっと着席すると、記念撮影中のひろみんがステージから目配せを寄越す。
彼女の目線の先を見ると、ステージ上手端の席に確かに老人が…ん?外人?
サスガは国際観光都市アキバだと感心…
しかし、おひとり様と逝うのは珍しいw
ダークスーツにネクタイで、浮いて当然なのに御屋敷の喧騒の中に静かに溶け込んでる。
穏やかな微笑みを浮かべ、その表情を崩すコトなく、恐らく閉店まで居続けそうな気配。
「良さそうな人で、特に問題なさそうだけど…ホントにヲタクなのかな?」
「しっ!ほら、高速リターンしてます」
「えっ?あ、ホントだ」
御屋敷は、実は時間制で時間が来ると強制的にお出掛けとなるが、伝票上、退店即入店したコトにし裏技的に居続けるコトも出来る。
@では、コレを高速リターンと呼ぶ。
例の紳士は、お出掛けを促しに来た若いメイドに高速リターンを告げたようだ。
さらに、そのメイドを記念撮影に誘って、ヤタラたくさん撮影し彼女を喜ばす。
メイドとツーショットの記念撮影は¥500/枚だけど、本人に¥150/枚のバックがある。
記念撮影の相手を多く務めるコトは、人気者の証でありバイト代も潤うと逝う仕組み。
だから、ヲタクは競って推し(てるメイド)を記念撮影に誘うのだが、彼は満遍なく誘う。
コレは"愛される御主人様"になる上で重要なコトで、ソレだけでも彼が曲者とわかる。
さらに、高速リターンの度に御帰宅料を払うのはモチロンだが、新規オーダーがスゴい。
紅茶しか飲まないのに(恐らく毎回)プレミアムコースをオーダーしお土産類が溢れてるw
さらに、のべつ幕なしに何かオーダーしてるので、多分凄まじい客単価になってるハズ。
チラ見えした"御主人様カード"は漆黒で、誰も持ったコトのない噂の漆塗りカードだw
さらに…
「あれ?パスポートを見せてるぞ?何をする気だろう?渡航歴自慢?」
「誕生日の確認ですね。バースデーイベントのリクエストではないかしら」
「え?こんな時間に、お誕生会をやるつもりなのか?」
誕生日の御帰宅には、バースデーケーキと、その時に御屋敷にいるメイド全員からの歌と集合写真のプレゼントがある。
僕達の場合は、普通ココで運転免許証を提示し誕生日の確認をしてもらう。
彼の場合は、運転免許証に代わるモノがパスポートと逝うコトなのだろう。
さらに、集合写真の時に隣に座るメイドの指定も出来るから、ココは当然ドリィを指定…
とか思ったら、様子が変だwパスポートを見た若いメイドが蒼白な顔で誰かにうなずく。
ガタン!
大きな音がした方を見ると、奥のボックス席の黒人4人が椅子を蹴り倒し立ち上がってるw
やや?さっきまでウレしそうに「萌え萌えシャカシャカ」とかやってた連中ではないか!
「☆♬〜【!」
「#&"「☆←〓?」
「〆+ゞ◯!」
英語やアジアンな言語ではなくて、太鼓を打ち鳴らすような、低く太く、激しい言葉だ。
荒々しい叫び声に、喧騒がピタリと止み、時が止まったように全てがその場に凍りつく。
その中で、叫んだ男達より、そして誰よりも早く動いたのがドリィだ!
勝手に叫んで凍りついてる男達の眼前から爺さんの手を引き走り出す!
ソレも、あろうコトか僕達の方へw
来るなっ間違いなくモメゴトだろ?
次の瞬間、時間停止装置が解除されたか、御屋敷中の人とモノが一斉に動き出す!
黒人達が大声を上げドリィと爺さんを追い、その前後をメイドやら御主人様が右往左往。
爺さんの手を引くドリィが、タッチの差で僕とミユリさんのテーブルに先にたどり着く!
「助けて欲しいトコロの私達」
「勘弁してくれょ。コレ、何か国際的なモメゴトだょな?とりあえず、WTOとかに提訴するのが最近の流行りだぜ?ソレに…この爺さんはドリィの嫌な奴なんだろ?」
「私の父ナリ」
ええっ?!
第3章 色は白いがアフリカン
ドリィのパパ?
じゃ仕方ないw
「ひろみん!キッチンから出してくれ!」
「わかった!ミントさーん、頼むわょ!みんな、ドリィちゃんを逃すの手伝って!」
「かしこまり!」←メイド全員が唱和w
カウンターから割烹着姿のメイドがフライパン片手に飛び出して来て僕達に手招き。
@古株キッチンメイドのミントさんがミユリさんとハイタッチして裏口を開放する。
御屋敷の中では、黒人達の前に次々とメイドが現れて、紅茶をこぼす、オムライスをひっくり返す、抱きつく、記念撮影を申し出る←
その間に、僕とミユリさんとドリィとドリィのパパ?は裏口からノン・キホーテ店内へ!
背後で鉄扉が閉まり、閉まる直前にフライパンで誰かの頭を殴るドラのような音が響くw
残りは3人…かな?笑
ノン・キホーテは、みんな逝ったコトあるょね?歌にもあるがソコは"ジャングルだ"。
床以外の天井含む全ての面から、所狭しと商品が並べられ店内は雑貨ジャングルの迷路。
エスカレーターを見張ればいいのに、ジャングルに押入る追っ手を巻こうとしたけど、敵も天晴れ、追跡の達人なのか振り切れない。
そのまま、勢いで地下のライブハウスに突入したら、何と水着イベント発動中w
"アキバ水着ビーチ"と銘打つ地下アイドルの下駄箱ライブだけど全員が水着←
ジャングルの次はビーチかょw
多くの場合、ライブハウスって夜が稼ぎ時で昼間は"箱"が遊んでるワケだ。
他方、今時の地下アイドルはグラビア上がりも多く、余り水着に抵抗がない。
水商売や風俗ではなくライブ、しかも物販で稼げるとなれば彼女達に躊躇いはない。
しかもカクテルライトに水着でヒールとなれば歌もダンスもユルユルでOKなのだ←
JKだと難しいが、大学生以上なら問題なく、個撮落ち寸前のアイドルには朗報?
そんなこんなで、最近アイドルもヲタクも幅広い年齢層の水着ライブが増加中w
で、今時の箱はアイドル好みの広い物販エリアに楽屋&トイレが綺麗は常識。
…と逝うワケで、追っ手の3人組は老若男女の中に紛れ、僕達も隠れやすい。
早速広めの女子トイレに隠れ(4人w)ドアを薄く開けて外を見ると、何とクノイチアイドルのヲフ会整理券の列に黒人が2人並んでるw
おぉヲタクに肌の色も国籍も関係ナイ!
でもヤハリ"和"がウケるな外人にはw
コレで追っ手は、いよいよ最後の1人になったが…やや?あの顔には見覚えがあるぞ?うーん何処で会ったっけな?おぉ!あの顔はw
僕は、奴には"貸し"がある!
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
彼は、大使館員だ。
先日、母国の訓令とかでメジャーデビューを果たしたみさニャンのヲタクグッズ強盗を図った彼を、僕達はアキバ追放処分にしてるw
懲りズに戻って来たのか?
しかも今度はドリィ狙い?
大使館員によるヲタクグッズ強盗なんてのは格好のマスコミネタだぞ←
許せナイ!証拠画像も押さえてるから、ココは情け容赦なく公表だっ!
でも何処の大使館員?
ドリィが小声で囁くw
「南アフリカの小国、ルカンダ。あの者達がルカンダ人であるコト間違いナシの事実。レアメタルである白金族パラジウムの産出するトコロの国。チャイニーズの手引きで、沢山の傭兵、来た。軍事クーデター、起きた。ソレで、今は軍事政権になってしまた国の名前はルカンダ」
「ええっ?な、何だょ?ドリィ、ヤタラその国に詳しいけど、何で?そのルカンダとか逝う国の観光大使か、キャンペーンガールでもやってるの?」
「私、じゃないけど、この人である私の父は、民主政権最後のルカンダ大統領だたが、今は、国を追われたトコロの大統領やってる人は私のパパ」
ホ、ホントかょ?
第4章 ル・カンダに雨が降る
色は白くてもアフリカン。
アフリカで肌の色が黒いからアフリカンだと思って話してたら実はアメリカンでした、なんて話はよくある(人から聞いた話デスw)。
人種もヲタクも肌の色だけで判断すると間違えるし、そもそも判断する必要がない。
ミラノにはないのに、何でミラノ風ドリアなのとか、その手の話は捨てるほどある…
あ、全く関係ないか←
と・に・か・く!あくまで任務に熱心な最後の1人が女子トイレの前でモジモジしてる。
恐らくライブハウス中を探し尽くして、後はココの女子トイレを残すのみなのだろう。
僕が目配せすると、ミユリさんは頷いて水を流してから個室のドアを開けて出て、外にいる最後の1人の下へアタフタと駆けて逝くw
「助けて!貴方、スタッフの方?個室に入ったら中で男女が恐ろしいコトを!年の差がハンパないので恐らく援交だと思います!」
「○〒%<!」
「コッチょ!コッチの個室ですっ!」
コレ幸いと女子トイレに入り、個室に顔を突っ込んだのが運の尽き!
そのまま僕達に首根っこを掴まれ、個室に引きずり込まれてしまうw
広いとは逝え、個室に5人は狭いょ!
息が!息が出来ない!助けてくれぇw
ソコへ、もっと息苦しくなる展開が。
「(だ、大統領閣下!こんなトコロにおられるとは!何ともおいたわしい。ん?マサカこーゆー御趣味が?)」
「(バカ者!余は追われておるのじゃ。あろうコトか汝らに。汝、余を捕まえに来たのであろう?)」
「(とんでもナイ!ソレは、あいつら軍事政権の放ったスパイどもです!私は、忠実な1外務官僚に過ぎませんゆえ)」
以上が、嫌な爺さん、もとい元大統領閣下と大使館員のルカンダ語でのやりとりだ。
ココでドリィを通訳にして、僕も話に割り込んで逝くコトにするw頼んだぞドリィ!
「(今の話はホントか?万一ウソなら、僕達はいつでも貴官を破滅させる用意がある。いつぞやのみなニャングッズ強盗の証拠動画、僕が行方不明になると1時間以内にMYTUBEに自動的にUPする仕掛けになってるからな。忘れるな!)」
「(ぎゃ!コ、コレは魔女のバーサンの呪いか?いつぞやのジャパニーズ・ヲタクじゃないか?!秋葉原に来れば、またお前に逢いそうな嫌な予感がしてたんだ!俺がお前らを裏切るハズがないだろう!そんなコトより、軍事政権のスパイはココだけじゃない。別班が作戦中だぞ。お前達の力で阻止してくれっ!)」
「(別班だと?そいつら何を狙ってルンだ?)」
その時、ドリィのスマホが鳴る。
「あ、トロイ?どーしたのと思う私達」
「ドリィ!スマン、強盗に盗まれた」
「何を?ま、まさかっ?!」
えっ?!盗まれたのは…ドリィの息子?
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
まさかドリィがシングルマザーだったとは…
御天道様でも御存知ないから僕も知らないw
まるで室内を台風が通過したような大惨事。
全ての家具が転倒し、あらゆるモノが散乱。
トロイさんの部屋に侵入したのは多分プロ。
「すまん。コレでも抵抗したんだが」
「息子が!私の息子が!」
「ジャパニーズ・ヲタク、新聞読むか?」
解説しよう。
最初は、億万長者のトロイさんで、部屋の割には彼自身は特に争った形跡はない。
強盗、と逝うか誘拐犯に侵入され、特に抵抗しなかった?金持ち喧嘩せずって奴?
お次は息子が誘拐され半狂乱のドリィwしかしシングルマザーだったとはトホホw
最後はルカンダ大使館員だけど、明らかに不必要な昨日の新聞を僕に押し付ける←
何なんだ?
その新聞を開いてみたら…アフリカン3名のプロフィール入り顔写真が挟んであるw
ま、まさか?誘拐犯、じゃなくて誘拐班の3名なのか?驚いて彼を見ると涼しい顔←
「ルカンダは、法治国家だ。既に元大統領の一存で何かが動く国ではない。また、ルカンダ大使館は、自国民の個人情報を他国民に売るようなマネは決してしない」
「君は…君の職務を果たした。まさに外務官僚の鏡だな。コレで貸し借りはナシだ」
「一言付け加える。我々は入国した時から、個人の金の流れまで、お国の政府に監視される身だ。別班も必ずモニターされていると考えるのが適切だ」
実際、その通りだ。
僕はプロフ付き顔写真を写メしてストリートギャング"セクシーボーイズ"に撒く。
ほぼ瞬時にセクボお抱えのサイバー屋から電話がかかって来て居場所が特定されるw
「スピア!僕のスマホに電話するな!僕が電話が嫌いなのは知ってるだろ?何度逝ったらわかるんだょ!」
「テリィたん!元カノ会長である私に断りもなく、今度は一体何を始めたの?あのね、黒人さん達のスマホを特定して追跡したの、私だから!」
「神様、仏様、スピア様!ありがと!さすがは自慢の元カノ会長様!」←
スピアは、本人も知らない僕のスマホの電話番号を知ってる凄腕の女サイバー屋だ。
話は横道にそれるが、元カノを僭称してるけど、彼女がカノジョだった事実はナイ←
「昭和通りで上野向きに路駐してる黒いSUVの中に3人いる。張り付いてる追跡チームの話だと、さっき赤ん坊の泣き声がしたって」
「間違いない。突入してくれ」
「あのねー。SWATじゃないんだから。セクボに出来るのは、SUVが動けないように前後を挟むコトまでょ。今から、万世警察に通報する。テリィたんは、誰だか知らないけど、お母さんに誘拐の届けを出すように言って!この電話を切ったら即、通報する。大急ぎでね!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
現場への到着は、万世警察よりも神田消防の方が早かったそうだ。
銃を所持するスパイ団をモノともせず救急隊員は車のドアを叩く。
別班は、自ら赤ん坊を抱いて現れ、救急隊員の救護措置を助けて救急車を送り出す。
その後到着したパトカーの警官に拳銃を差し出し投降、警官は敬礼で答えたらしい。
もともと、外交特権で守られた彼等は、シラを切り通すコトも可能だったのだが…
単なる美談として紹介したワケではない。
彼等も何者かに追い詰められていたのだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ドリィは、丘の上の大病院で息子を抱き締め駆け付けた警官の事情聴取に応じる。
その間、ミユリさんが赤ん坊を抱き、僕が変顔で笑わせていたら看護士さんから…
「可愛い赤ちゃんですね。お2人にソックリだわ」
「えっ?ええっ?違う!私達、違うんです!」
「ぼ、僕達は、御主人様とメイドです!」
すると、看護士は、僕達が何か冗談を逝ったと思ったらしく、大笑いして手を振るw
ソコへ、先に事情聴取を終えた元大統領閣下がやって来て、赤ん坊の顔を覗き込む。
「この子には、何も背負わせたくない。ドリィは料理はダメだが、お茶を淹れるのが上手い。ママに似たのかな。実は22年前、アメリカ留学中に浮気をした。ママが世継ぎを設けるコトが出来ないとわかって、自暴自棄になっていた頃だ。人は誰も認めたくはないモノだ。若さ故の過ちなど」
「その時に出来たのが…ドリィさん?」
「そうだ。その後、チャイニーズの思惑で軍部がクーデターを起こし、ルカンダにいた私の家族は、全員が処刑された。民主的に選ばれたとは逝え、私自身が族長でもある。世が世なら、大統領ではなく酋長にでもなっていたかもしれない。だから、軍事政権は、私の血筋の抹殺にこだわる。この21世紀の世の中に。今さら、王でも酋長でもナイのだが」
と逝うコトは…世が世ならドリィは王女だったのか?
「閣下は、コレからどうなさるおつもりなのですか?」
「私は、祖国ルカンダに帰り、運命を受け入れるつもりだ。でも、その前に…君達、秋葉原のヲタク諸君には、心よりの感謝を表したい。亡命の身ゆえ大したコトは出来ないが、せめて晩餐だけでも」
「わ!ダカレー(マチガイダ・サンドウィッチズのスペシャルカレー)だっ!しかも、病院に出前だと?ユーリ店長にいくら積んだんですかっ?!し、しかし、このアフリカンなスパイスはw」
人はナゼ、祖国に帰りたいと思うのだろう。
家族に会うため?両親かな?恋人に逢いに?
先祖など顔も知らない名前に過ぎないのにw
なぜか血縁の強い絆を感じ長い歴史の中に自分を置くコトで安心を得るのかもしれない。
でも、いつも僕達の胸の中で永遠に生き続けて逝くのは、今、目の前にいる人達なのだ。
だから、未来に待つ悲しみばかりを考え、生きて逝くコトはやめよう。
今、君はココにいる。
僕も、ココにいるょ。
ソレが、全てなんだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
それから暫くして、トロイさんがオンライン食材配送システムを立ち上げる。
このビジネスモデルの中核となるのは、カレー配送アプリ"ル・カンダ"だ。
"ル・カンダ"は、神田に乱立するカレー屋とアキバに密集する御屋敷を結ぶアプリ。
今、@のキッチンメイドのミントさんが"ル・カンダ"を立ち上げ、注文を入れる。
運用初日、あいにくの雨だが、既にメイド姿でショーアップしてるドリィは屈託がない。
「メイドは、日本語学校の学費稼ぎのバイトとして始めた。パパは、1人で来ていつも紅茶ばかり飲んだ。チップたくさん。デカいダイヤもくれた。でも、絶対ニセ物。もう1人のママに知られたら、私、きっと殺される。あの世で」
その横では、ミントさんが心配そうな顔の社長メイドひろみんに熱心に説明をしている。
「メイドがオムライスにケチャップでお絵描きするように、コレからはカレーにマヨネーズでお絵描きをするのです!このアプリで配送されたカレーのルーに、マヨが加わるコトを前提にしたコクを増し、御主人様方にお出しするのです」
「おぉ!さすがはミントさん!ナイスアイデアだな。ひろみん、記念撮影のオーダーいいかな?ミントさんとツーショット」
「ええっ?私と?キッチンメイドですょ?@も長いけど、そんな御主人様、貴方が初めてょ?でも…嬉しい」
ヤレヤレと逝う顔のひろみん。
「キッチンメイドとの記念撮影なんて前例がナイけど、特別にいいわょ。それと…ミユリには黙っといてあげる」
「あ、心配ご無用!ミユリさんからは、萌え活の一環として既にアプルーバルが出てるから」
「ズルいの人はミントさん!私もテリィ様に記念撮影されたいトコロのメイド。テリィ様、ゼヒ私とも記念撮影プリーズ!」
わ!ドリィだwと、ソコへカレー到着!
雨の日なのに、ギリギリで10分以内w
ミントさんとドリィが小さな皿を2人で競うように運んで来るw
おぉ!朝から御屋敷で神田の有名店のカレーが食べられるとは!
「わぁぁぁ。何か神田の本店で食べるよりも美味しいような気がする。何故だろう」
「ソレは…私達メイドが"愛込め"をしてるからです。そのカレーには、メイドの"愛"が込められているから美味しいに決まってます」
「そ、そうか!そうだったのか!」
…んなワケないだろ笑
どんなカレーだって、1晩寝かせて翌朝食べる方が美味しいに決まってるw
モチロン誰かが"愛込め"をしてくれれば最高なのは逝うまでもないけど。
今、目の前にいる人がね。
出来れば、メイド服でさ。
おしまい
今回は、アフリカ小国の元大統領、クーデター政権が送り込んだスパイ団、在日公館の官僚、カレー配送アプリを開発する起業家などが登場しました。
学生時代に見た映画「サンチャゴに雨が降る」を想い出しながら描きました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。