4枚目
ん? なんだこいつ。俺を意識し始めた?
いったいどういうことなんだ。このワカメは何を言っている。俺には全く理解できない。
「お前気持ち悪いな……。死んだ方がマシじゃないのか」
考えるよりも先に言葉が出た。するとギャラハットは目を見開き、あろうことか急に笑いだした。本当なんなんだこいつ。
「あはは、そうですね。もちろん変な意味ではなくてですね、仕事のためです。曲がりなりに親の手伝いをやっていたので。『その人はどんな思いをして過ごしているのか』とか、そういうことを考えていただけです」
「なるほどな。じゃあ失せろ、ワカメ」
「なぜです!? ていうかワカメってボクのあだ名ですか? それは嬉しい」
ギャラハットの左頬にストレートを打ち込む。こいつはどこまでも救われない奴だな、と死んだ目で俺は察した。
「いてて……。いきなり酷いですね、アイライトくんは」
しばらくしてギャラハットが起き上がる。俺としてはそのまま目覚めないで欲しかったが、加減もあったので仕方ない。
「あぁ。別に起きなくてもよかったけど、お前の親に迷惑かけちゃ仕方ないからな。最悪、人質としての身代金も考えていたんだが」
「はは、冗談が上手いですね!」
間違ったことは言っていないので口を閉じる。最初は笑っていたギャラハットだが、次第に焦り始めるのが面白くて何も言わないでいた。
「ま、まぁこの話は置いといて。孤児院で過ごす気はありませんか? と言っても警察と話していた時に、ほとんどボクの親が手続きを済ましちゃったんですけど」
「行くあてもないし、お前のところで世話になる」
それを聞いたギャラハットは口角を上げ、一番最初に出会った頃とは違った笑みを見せた。心から嬉しそうな、純粋な笑顔だった。