3枚目
両親が死んだというのに、今日は心地よく眠れた。今までなら悪夢にうなされているところだが、すんなりと眠りの海に溺れていく。
ふと目が覚める。知らない天井だ。俺はベッドから起き上がると、ここが普段使われていない部屋だと気づく。
「ここは……」
「ここはボクの両親が経営してる孤児院です」
ふいに隣からワカメ男の声が聞こえ、思わず左を向く。ワカメ男はベッドに腰かけており、俺を見るや否や笑みをこぼした。
「お前は……」
「ボクはギャラハット。ギャラハット・オトゥールと言います。君はアイライトくんですよね。以前から知ってましたよ」
ワカメ男はギャラハットと名乗り、律儀にお辞儀をする。見れば奴の服は小綺麗で、白いシャツに赤いリボン。黒のズボンに茶色のブーツをはいていた。俺の見た目とは全く違う。
「そうだ、さっきから思ってたんだ。なんで初めて会うお前が、俺や両親のことを知っているんだよ」
正直言うと、こいつは信用ならない。知り合う前から俺のことを知っているなんておかしい話だ。最近この辺りでストーカー被害が多いと聞くし、もしかしたらこいつが……。
「あぁ、それはですね。両親や施設を通して貴方を知ったんです。ボクのところでは、虐待などの疑いがある家を調べる時があるので」
なるほど、そういうことなら納得はできる。ひとまずギャラハットがストーカーの可能性は消えた。実際、俺が部屋に閉じこめられていた時に、サポートセンターを名乗る奴らが来ていたからだ。
ちなみに、その時の母親は俺が出かけていると嘘をついてその場をやり過ごしていた。母さんは酷い母親でもあるが、同時に恐怖を抱いていた。死んでいてもそれは変わらない。
「まぁ、その時からアイライトくんを意識し始めたんですけどね」