16枚目
「あ……。う、嘘だ……」
逃げないといけないのに体が言うことを聞かない。開いた口がふさがらないばかりで、膝もすっかり笑ってしまっている。
本当にまずい。このままでは殺されるのがオチだ。でも、死んでしまっては意味がない。せっかく幸せになれたのに、こんなところで人生を無駄にはしたくなかった。
「うっ、うわあああ!!」
殺人犯に背を向け、俺は全速力で走っていく。警察に通報することもできず、自分の身を守るために必死で逃げる。
幸い殺人鬼は追ってくる様子もなく、一度振り向いた時にはもう誰もいなくなっていた。
「なんだよ、あいつ……」
息切れになりながら頬には涙が流れていた。もし殺人犯が女だったら、俺の命はこと切れていただろう。
震える手で孤児院のドアノブに手をかける。ギャラハットが起きていたらどうしよう。今度は殺されるかもしれない。殴られるかも。
「おかえりなさい、アイライトくん」
落ち着かないまま玄関のドアを開けると、やはりギャラハットがいた。キッチンで料理でもしていたのか、いい匂いが立ちこめる。ギャラハットはソファから立ち上がり、俺の方へとやってきた。
「なんでボクの言うことを聞いてくれないんですか?」
なんとギャラハットは服の内ポケットからナイフを取り出し、俺に笑顔を向ける。俺の頭はキャパオーバーになり、あともう少しで息が止まりそうだった。