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10枚目

「……ただいま」


 声を殺して慎重にドアを開けると、消したはずの電気が点いていた。消し忘れてしまっただろうか。外へ行く前と変わったことは、何も書かれていない一冊の手記と、オカマがいるバーに行ったことぐらいだ。


「ずいぶんと帰りが遅かったのですね」


 声がする方を向くと、当然ギャラハットがソファに座っていた。その声は心配しているというよりも、怒っているように聞こえる。


「あ、あぁ。悪かった、ごめん……。書き置きはしたから、そこまで心配しないと思って……」


 ギャラハットの目を合わせるのが怖くて、俺は無意識にうつむいてしまう。母さんとは別の怖さを感じる。


「こんな時間まで、どこをほっつき歩いてたんですか?」


 ギャラハットが近づいてくる。体がすくんで動けなくなる。嫌なことを思い出したが、なんとか踏みとどまって口を開いた。


「ど、どこへ行ったって別にいいだろ」


 つい癖で反抗してしまった。ギャラハットの顔を見るのが怖い。怒る顔を見たくなくて、今にも泣きたくなる。


「そうですか……。言いたくないのならそれでいいです」


 ギャラハットの顔が一瞬だけ暗くなる。幻滅させてしまったのだろうか。だとしたら、俺がちゃんと謝らなくてはいけない。泣きそうな声で俺は口を開く。


「ご、ごめんなさい。心配させて、ごめんなさい……」


 ついに俺の心が耐えきれず、涙が流れてくる。本当は泣かないように我慢していたのに、そんなことは無意味だった。


「いいえ、アイライトくん。ボクも少し言い過ぎました。大丈夫ですか?」


 ギャラハットが優しい笑みで俺に気遣ってくれる。よかった、いつものあいつだ。もう怖がることはないと思った時だった。


「もう二度とボクを心配させないでくださいね」


 ギャラハットは怖い顔を向け、俺はただうなずくことしかできなかった。

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