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〜 伝説の胎動  〜 エピローグ

 〜 エピローグ 〜


 †GATE15 未来への扉


 やさしいそよ風が頬を撫で赤い夕陽に包まれ照らされて唇を合わせる二人の姿があった。 シオンとアイナの姿である。

 互いの唇が一度離れ暫し見詰め合うと二人はやさしく抱き合い再び唇を合わせた。 

 長くぅ――――――――――て、甘いぁ――――――――――い、キス。 二人は、唇の形を確かめる様に唇を重ね合っていた。 

 二人に忘れられ放置されている人物がいた。 


 それはランスだった。

 二人が、唇を離し三度(みたび)唇を合わせようとすると……。

「いつまで、やってるの」 

 ランスが意識を戻したのは、一度目のキスの時だったのだ。

 驚きとシオンとアイナの自然な雰囲気に声を掛けるも躊躇われる。

 見てはいけない所を見てしまった様な気がしたランスは、気を失っている振りを続けた。 

 二度目のキスの前に声を掛けようとタイミングを計っていたのだが、アイナの性格を良く知るランスは、直後に声を掛けようものなら、照れ隠し為に何をやらか分からない。自分は愚か先程までゴーレムと戦っていたシオンもどうなるか解らないと思い暫らく間を取り起き上がる事にした。 

 僕っていい奴、自然に、自然にと思うランスだったのっだが、そうしている間に、二人は二度目のキスに入りタイミングを逃したのだ。  

 しかし、二度目は、更に長くぅ―――――て、甘いぁ――――い、キス。

 ……なかなか起きだせない。 

 流石に温厚な性格のランスも、イラッきてつい声を出してしまった。 


 ランスの声に二人が慌て、つぃと離れ互いに背を向ける。

 突然の声に驚き、テンパったアイナは見られていたかもと言う恥かしさを誤魔化そうとした。

「べ、別に何もしてないですぅよ。ねぇ――シオン、キ、キスなんて、ね、ねぇ――」

 アイナが顔を真っ赤に染め、そう口走った。 

 いや、見てたから、しかも……言ってるしとランスは思たが口にはしなかった。

 僕は、こんな役回りさ……と溜め息を付くランスだったが、思い直し二人に尋ねた。

「ところで、あの女の人は?」 

 ランスがシオンの傍に朦朧とする意識を堪え、たどり着いた時、後ろから迫って来るランスに気付いたが、魔力を使い果たし気を失った。 

 ランスが最後に見たのはシオンの魔法と光を纏う女性が放った魔法の光に飲み込まれてシオンの姿だった。 

 シオンが近くに弾かれて来た姿は血だらけで虫の息だった。

 その後、戦い倒せたとは思えない。

 しかし、良く見るとシオンの傷は消えている。

「知らねぇよ。俺が目を覚ました時には、もう居なかった」

 アイナが口を開くと自分の見た事を二人に話し出した。

「アイナが目を覚ますとあの女が、なにやら、シオンを光の中に吸い込んだですぅ。シオンが、その光に消えてしまいアイナは、シオンが死んでしまったのだと思たですぅ」

 アイナが言葉を続ける。

「あの女性は言ってましたですぅ。友の願いの遺産をずっ――と、何千年も護っていたのだと、その遺産を狙う者は多いのだと、友が願いをシオンに託したのだと云って、あの女が自分の心臓を取り出し半分、引きちぎり光に包まれたシオンの身体の上で血を絞り出すようにシオンの体内ひ埋め込んだすぅ。光と女の血は交じり合うようにシオンの身体に吸い込まれていったですぅ。そしたら、シオンが生き返りやがったのですぅ。アイナがシオンの傍に行った時には、もう、エルフは逃げていやがったですぅ」

「じゃぁ、あの女性がシオンを助けてくれたのかな?」

「シオンは、覚えてないの?」

「いや、ほとんど覚えてない。その女の声とは違う何者かに何か聞かれていたけどな」

「それは、きっと、あの人が云っていた。“友”ですぅよ」

「俺が覚えているのは、そいつがお前に託すと言ってたのと、アイナが呼んでくれた事くらいだ」

 アイナが顔を赤らめながら呟くように言った。

「ほんと、シオンは使えん奴ですぅねぇ。肝心な事は覚えてないのですからぁ」

 一呼吸おくとアイナは、更に顔を赤らめ言葉を続けた。

「ま、まあ、ア、アイナが呼んでやったこと、覚えてるから許してやるですぅ」

 アイナは顔を赤らめてシオンと目が合度にもじもじと指を絡めている。シオンもアイナの顔をまともに見られないでいた。

 お互いに目を合わすとそんな事より先程のキスを思い出すのであった。 

 シオンとアイナは、先程の甘ぁ――――いキスを思い出し黙ってしまった。 

 ランスが、シオンの傍らにあるなにやらヘンな物に気付く。

「それ、なに?」

 見た目は、大きい“羽団扇”の先が尖ったようなものに宝石が嵌めるれて、外縁には翼の装飾が掘り込まれている。 

 アイナは、“フィノメノンソード”を見てあの女の人が『友が託した』と言っていた言葉を思い出した。

「あの女が、なんとかソードと言ってたですぅ――えぇ――とぉ、確か」

 頭を捻る。

「フェラ……フィラ……フェラなのん?」

「自分の言葉に疑問符付けてんじゃねぇよ」

「そ、そうですぅ。フィノメノンソードと言ってたですぅ」

「ソードと云うんだから……剣なのかな?」

 よく見て見るが、刀身が見当たらないしどうにも剣に見えないのである。

「それを、シオンに友が託したとあの女が言ってたですぅ」

「じゃあ、これがその人が守っていたと云ったシオンに託した遺産なんじゃないの?」

 シオンは、内心 こんなものいらねぇ、と思ったが一応命を助けてくれたようだし俺もどんな形にせよたくされたんだからしかたねぇか、どうせならこんな物より無くしている完全な記憶が戻ってほしいと思った。 

 そんな事を考えているシオンにランスが尋ねた。

「シオン、記憶は戻ったの? 何か少しでも思い出したとか」

「いや、まったく思い出してねぇ。AMRS以外の事はな」

 アイナとランスの心の声が具現化し口から放たれる。

 それはまるで暗黒魔法かと思える呪詛の一言を吐き出した。

 流石は、双子といったところなのか、二人は声を揃えて言った。

 「やっぱり、只の馬鹿じゃん」 

 酷い言われ方である。

 シオンは、只の可哀想な馬鹿だ……いや、記憶喪失者だ。

「なんだとぉ! お前ら……声まで揃えて言いやがって!」

 「そろそろ、帰ろう。あまり遅くなると母様が心配するよ」

「腹も減ったし、早く帰るですぅ」

「暗い道だから、馬で早駆け出来ないね。二時間は掛かるなぁ」

「えぇ――、腹も減ったですぅ。早く帰るですぅ」

「僕、魔力回復してないし魔法使っちゃ誰かに見られるかも知れない」

「俺が、やるよ。あいつ……あの女がくれた魔法なら使える様な気がする。上手く使えるかは分かんねぇけど」

「シオン、魔法を譲り享けちゃったの?」

 こいつも馬鹿だ……とシオンは思った。

「オークの時も使った物が魔法だと言ってたのは、お前達だろ」

「シオンがスペルマ・スターになったのですぅ?」

「スペル・マスターね」

「そこまで、出来ねぇよ」

 シオンが魔法を唱えた。


 瞬時に誰もいない家の裏にはに着く。 

 三人は家に向かい歩き出した。 

 家では、ナタアーリアが夕食を整え待っていた「あら、お帰りなさい」と微笑みに満ちた顔で迎える。 

 ダルベス、ベリル、スクナ・メラを交え夕食の後、シオンはこっそり歓談の中を抜け出し自分の倒れていたラウル湖の辺りに来ていた。

 明日の朝、アイナとランスは奉公先の主のいる街に戻る。

「公爵様に頼んでみる」

 とランスもアイナも言ってくれたが、奉公人の言う事を受けるとも思えない。 

 ナタアーリアが以前『家に居てもいい』と言ってくれていたが、ダルベス、ベリル、スクナ・メラの住む場所が落ち着くまで、ナタアーリアの家を宿屋として使うだろう。

 あの家では五人は狭い。

 自分自身は認めてないが、アイナとランスと離れるのは寂しい。

 知らず知らずの間に気になる異性になってきているアイナと離れるのは嫌なのである。

「これからどうするかなぁ」

 自分には行く宛てもなく記憶もない。

 シオンは、夜空を見上げた天は星達が光の実をつける葡萄畑に見える。

「はぁ」

 切ない溜め息が口を吐いた。


「こんな所で何してるですぅかぁ?」

 シオンが振り向くと後ろにアイナが立っていた。

 アイナは、こっそり抜け出すシオンを見て後を着けて来たのだ。

「探し物は、見つかったですぅかぁ?」

「いや、これからどうすぅかなて――思ってぇさ」

 シオンは切なく呟いた。

「どうも、こうもねでぇすぅ」

 アイナは顔を赤らめて言った。

「せ、責任は取ってもらいますぅですぅ」

「何の?」

 アイナは更に顔を赤らめて控え目な口調で言った。

「な、何のってそ、その、キ、キスしたですぅ……ア、アイナのおニューのキスだったのですぅよ……つべこべ言わず責任とりやがれぇですぅ」

 アイナは、暫し俯き黙り込んでいた。

 シオンに掛ける言葉を探して……。

 考えている言葉は一つだけ、アイナはシオンに思いを切り出した。

「シオンもアイナとランスと一緒に来るですぅ」

「お前達の主が使用人の話なんて聞く訳ないだろ」

「心配すんなですぅ。アイナが、ナシ付けてやるですぅ」

「ありがとな」

 シオンが微笑み呟いた。


 翌朝、ログの村は何時もの様に清々しく晴れ渡っていた。

「早く、しやがれぇですぅ」

 清々しい中にアイナの声が響き渡る。

「行くよ。シオン」

 ランスが馬を引き出した。

 シオンは、ナタアーリアから古いズタ袋を貰いブレスレットから何時ぞや飛び出してきた持ち物を入れた袋を担いだ。 

 三人が歩き出すと耳元で、パサッと羽音が聞こえるとシオンの左肩に三十セール程の妖精みたいな小さな女の子が止まった。

 蝙蝠の様な翼が生え、布切れを巻いた胸当てに際どい切り込みのパンツ姿。

 山の麓でエルフの様な長い耳に見えたのは頭から生えた角だった。

 その姿は鬼のようにも見える。

「ふぅふ、お兄ちゃん」

 聞き覚えのある声に三人が振り向いた。

「何で、お前がここに居やがるぅですぅ」

「何でってぇ、そりゃ私は、いつも友の傍にいるわ」

 鬼妖精が言った。

「何か、チビちゃくなってる」

 アイナが妖精の姿を見て感想を述べた。

「よく俺たちの居場所が分かったな? 決着付けに着たのか?」

「リ、リベンジですかぁ。ぺたんこ」

 アイナがシオンの言葉に便乗した。

「こら! ぺたんこ! 自分を棚上げしといて、ぺたんこ言うなぁ――! なんで分かるかだって? 分かるよ。お兄ちゃんと私の心臓(心)を分け合った兄妹みたいなものだから」

「友が、人の〔形〕に再構築したけど、二人は一心胴体“血(因子)”で伝わるのぉ」

 ナタアーリア達に見送られ馬を引く。

「しゅっぱあっ――ですぅ」

 何時も元気なアイナが楽しそうにシオンの新しい世界での旅立ちの口火を切った。

「行こうか」

 しっかり者のランスがアイナの言葉に続いた。

「行こう!」

 鬼妖精が相槌を打った。

「ああ、行こうか」

 鬼妖精の友に意志を託されたシオンが言った。


 三人ともう一人? の新しい未来の扉が、今開いた。


 End。


最後まで読んで頂き誠にありがとうございました<(_ _)>

次回は〜 伝説の胎動 〜

番外編です。

次回をお楽しみに!

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