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声を拾って  作者:
6/60

5.

しとしと雨の音が聞こえます。

私は、雨の音がとても好きなのですが、どうやら、青年もそうだったようで目を閉じて、雨の音を聴き始めました。


「……なぁ、帰って来いよ」

囁くように、青年が口の端にのせたのは、とても侘しい哀願でした。

私は、胸が締め付けられるような気持ちになって青年の肩口に頭を乗せました。

慰めたくとも、青年に私の言葉は届きません。それに、なにが青年にあったのか私にはまだあまりわかりません。それでも、なんとか慰めてあげたくて、なんとなく青年が何を求めているのか今までの青年と妹さんとのやり取りでわかってきたような気もしていました。半分以上は妄想に近い想像に過ぎませんが、それでもそれに近いことが起きたのです。きっと、青年と妹さんの身に。


……唯さんという方は、なんらかの理由で青年と妹さんの元に帰ってこなくなってしまった。……それを青年は、自らのせいだと悔やんでいて、未だに唯さんを待ち望んでいるのだろうと。


青年は、ぼろぼろといつしか涙がとまらなくなり、嗚咽を抑えきれなくなってしまっていました。

手元に握りしめているのは、きっと唯さんのものです。

頭を抱えるようにして小さく冷たい床に蹲りながら、ずっと声を押し殺して泣いている彼の姿に私は、肩に手を置こうとして、苦しくなって止めたのです。


私が慰めようとしたところで青年は気づかないですし、今は、唯さんという方を思って泣いているのです。

何故、彼に私の声も姿も聞こえないし見えないのでしょうか……。


私もさみしくなりながら、彼がうずくまっているところに彼と背中合わせで蹲りました。



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