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声を拾って  作者:
57/60

57.

※3つものブックマークを有難う御座います。合計で、4件です。嬉しいです。結末まで筆を進めて来ましたが、もう少しでこのお話も結末を迎えます。ブックマークを頂けたことを嬉しく思いながら、最後まであともう少し書ききろうと思います。このようなお話の読者となってくださった方々に感謝の気持ちを込めて。後、少々、お付き合い頂ければ幸いです。

"それ"の記憶が俺の中に流れ込んでくる。

それは、とても”痛い”ものだった。

心も、身体も、”痛い”ものだった。


”それ”は、荒んでいた。自らの運命を薄汚いと憎んでいた。自らを憎んでいた。

彼は、罪人だった。


彼が、ぼろぼろの身体で血反吐を吐きながらぼろ雑巾のように投げ捨てられたのを、治療してくれたのは彼女だった。一目見た時に、金を持っている人間だとわかった。


彼は、その女を襲おうとした。

彼女は、決して彼を責めなかった。


ボロボロ泣きながら、彼の手をさすってくれた。その涙を見ていたら、急に自分が恥ずかしくなった。

彼女は彼を何故か認めようとしてくれた。ひたむきに誰にも向けられたことの無い愛情を彼にそそごうとしてくれた。


彼は、変わろうと思った。彼女の為に。彼女に釣り合う人に彼はなりたいと思った。


けれど。


彼女は、ある日、傷つけられた。

彼は、目の前が真っ赤になって、傷つけた相手に向かっていった。

こぶしを振り上げた先にあったのは、相手をかばった彼女の姿だった。


「彼女は、俺に罪を重ねないでくれと泣きながら、私の手に縋って、そのまま……」


私は、周りの人間にとらえられて、罪人として処刑された。私は逃げることが出来た。私なら、出来た。けれど、それが出来なかった。彼女に向けたこぶしを私は。私は自分自身が許せなかった。だから、死を選んだと彼は言った。



そこから、彼の長い長い夢が始まったのだと、”それ”は、自嘲するように吐き捨てる。


「私は、まだ、夢の続きにいる。因果の鎖に縛られたまま」

……私は、何度味わえばよいのだ。

いっそのこと、このような世界などなくなってしまえと


私は思う。そのたびに、私は出来ない


私は、彼女と一緒になりたいだけだったはずなのに


私は、いつまでたってもあの時の罪人の私のままだ





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