55.「罪人ですら愛してしまうという優しさを持った人」
むき出しになった俺の魂と言えばよいのか、むき出しになった俺の心と言えばよいのか、許可もなく衆目に晒されたそれを、俺は、……俺の中の根源は、歓喜していた。それは、狂気に近い思いだ。
……そうか、と俺は理解する。俺の中にある”それ”はずっと、孤独の中で戦っていたのだろう。
そして、晒されたく、そして、そうすることを望んでいた。
「火神に、水神か」
俺の声ではないはずだ。俺はそんな声はしていない。けれど、俺自身から発せられたとしか思えない。それは不思議な体感だった。あたりに染み入るような深く涙してしまうかのような慈悲深い声でそれは言った。
「……お前たちが羨ましい」
羨ましい。とそう。
火神と水神は、はっとするように目を見開くと耐え切れぬように目を背けた。
「私は、根源などと呼ばれているが、それは私の意思ではない。私はただ、自由に生きたかっただけだった。身分違いだと罵られても、罵倒されても、好きなものの傍に寄り添いたかった。そしてそれをかなえるためだけに、この世界を構築した。そこまでしてもなお、すれ違い続ける」
……私は疲れたんだ。と。
思い通りにならないのなら、全てを壊してしまおうと
そう何度も思った
……けれども、そのたびに、彼女が止めに来る
俺の中の”それ”は、笑ったようだった。
水神様が、はっとしたように目を見開く。
翠だよ。彼女は、今は水の精霊の姿になっているようだが。
彼女は、いつもいつも、私を止めようと前に出るのだ。自らが何度消滅しようとも。ためらわらずに。
私が大昔好きになったそのままの魂のまま変わらずに。変化せずに。彼女は綺麗なままだ。
ずっとすれ違い続けるだけなのに。彼女は私を止めに来る。
この苦しみがお前たちにわかるのか!
「……私は、お前たちが羨ましい」
俺は、根源と言われてもなお、大昔の薄汚い精神を変えられていない。
大昔、俺は一人のみすぼらしい、罪人だった。
……愛したのは彼女一人。そして、そこから”それ”の因果が始まる。




