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35.
その日を境に、俺は、そういったものをいくつも日常の中で目にするようになった。
幻覚と言ってしまえばそれまでだが、道を歩けば、なにかしらを目撃し、学校に行けば、同じ光景を何度も目にする。ひたすらにそれは続き、俺の疲労とストレスはどんどん増していく。
青い顔をして、窓際の席に座り、茫然と、空を眺めていた俺は(どこを見ても幻覚を見てしまうのでもはや空を見るか自宅にいることでしか心の平穏を保てない)
ぽんっと、肩を叩かれた。
見なくともわかる。俺を異物扱いしない俺の知り合いだ。教室にはそのうちの知り合いの二人しかいない。
三井祐樹。茶髪で、耳元にはシルバーのピアスをしている。人懐っこい笑顔の八重歯持ちだ。裏表がなさそうなさっぱりした性格で、小柄。もう一人は、不愛想で大柄、言葉少なででも兄貴気質の富沢遥。
どちらも何故か俺を構ってくる変わり者だ。
ぱっと振り向いて目が合って、
「おはよ」
と、力のない声をかけた。
「おう」
「おはよー」




