30/60
29.
「お兄ちゃん」
5歳の優美が、目の前に居る。
俺は、優美の顔を認識すると同時にはね起きた。
昨夜さんざん優美を連れ出すな。暫く会うなと釘をさされて怒られたばかりなのに、なにをしてくれているんだ。こいつは!
俺は、内心冷や汗もので、優美に聞いた。
反射的に枕元の携帯を見ると、まだ朝の5時30分だ。
きっと、優美のおばさんがまだ寝ている間に抜け出してきたのだろう。
なにをしてくれているんだ。こいつは!
「……優美、なんだ」
どう、怒ってやろうかと考えを巡らせていると、優美は俺が固まるような言葉を放った。
「唯さんって、誰?」
うわん
俺の中の時計がぐるぐると逆回転を始めたような錯覚に陥る。
_誰?
_誰?
誰?
ぐわんと耳の奥でなにか言葉が揺れている。
そう、優美の言葉だ。
……”優美は今、何を言った……”




