24.「あの日のこと」
あの日のことをここに記載するのは、この先、この俺の手記を目にする俺の協力者の為だが、そういうことを言いながら、俺はこの手記に過去を記載し、閉じ込めたつもりになることで俺の中で過去を終わらせたいと無意識に考えているからなのではないかと思う。
実際には、この俺の手記はただの気休めで、意味のないものだとしても、やはり、ここに俺の過去を纏めることは、俺の為になるのだと思っている。文字として客観的に俺の過去を何度も思い返し、見返すことで、整理が出来てくると自らが助けられると確信しているからでもある。そう、俺は整理をしたいのだ。
あの日、空は、抜けるような目のさえるような青空だった。
俺は、妹の手をしっかりと引きながら、唯に引きずられるようにして海に向かっていた。
彼女は、穴場を見つけたと、俺を強制的に引きずっていったのだ。
海の傍の洞窟に。
そこで彼女は不思議な体験をしたそうだ。
とても懐かしい感じのする美しい人に出会ったのだとそう。
俺は、何故だか無性に胸騒ぎがしたのをよく覚えている。
行きたくないのではなかったのだが、今行くべきではないのだと強く思えた。
今でもあれは不思議だ。俺は、”いきたくないわけではなく””今は、いくべきではない”と強く意識していたのだ。……”いつかはいかなければならないと意識していたのだともいえる”
けれど、俺は唯には逆らえなかった。
本当に行きたくないのならば、唯の手を振り払って妹を抱えてでも家へと引き返しただろう。
俺は、行きたくない訳ではなかった。……そして、何故か、唯だけで行かせてはならないとも強く感じていた。俺がいれば最悪な事態は避けられるとも確信していた。
……だから、表面上は嫌がるふりをしながら、心の奥にはなにかあったら俺がなんとかしなきゃとひそかに決意し、俺たち三人は、海の傍の洞窟へと向かったのだ。




