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巫女の最後の願い

作者: オジsun

小説家になろうの方に載せるのは初です。普段はミッドナイトノベルズで投稿しています。

気ままに書いた一品です。

誤字脱字また文章がおかしいといった意見が有りましたら教えてください。


 トウネ村、人口三百人程の小さな地方の村だ。

 村の真ん中に龍神湖と言われる大きな湖があるだけの村だ。


 この村で育った俺、サイトは今日で二十歳になる。今まで定職に就かずにただふらふらしていた。やりたいことがあった訳でもなく、世の中のどうしようもない事に諦めていた。


 その日はたまたま外に出て、龍神湖を散策していた。

 最初から雲がかかっていたが、途中で雨が降ってきた。

 近くにあった社で雨宿りするために上がり込むとそこには、青い髪の少女がいた。

 長い髪を腰まで伸ばしたその少女は大きな緑の瞳をしていた。


 「うっうう......うう」


 勿論、俺はその少女を知っている、代々続く龍神湖の巫女の一家でその孫娘、確か名前は......


 「ミリー? だっけ?」

 「!?」


 俺が社の襖を開けて声をかけると、少女は驚き肩をピクリと動かした。

 

 「ああ、ごめん。脅かす気は無いよ。ただ雨宿りしようと思ったんだ。ダメかな?」


 少女は俺の事を上から下まで見ていった。


 「誰ですか?」

 「あ、うん。そうだよね。わかんないよね。ほら。昔君が5歳くらいの時に会ったことある。サイトだけど......まぁ分からなくても仕方ないよ」


 キョトンとしてほうけている少女の目は、とても赤かった。


 「......お兄さんが話を聞いてあげるから、そのかわり、雨宿りさせてくれない?」


 泣いている少女の事は正直どうでも良かったが、これ以上雨に濡れるのも、雨の中を歩くのもウンザリだった。


 「知らない人には付いていくなと言われています」

 「......うーん。確かにそれは正しい。君みたいな可愛い子にいたずらする。変態もたくさん居るよ、でもね。俺は金髪派だから、君は対象外だよ」

 「フフフ、面白い人ですね。一体何の話ですか?」


 勿論俺の好みの女の子の話だ。


 強い風が吹いて襖を鳴らす。


 「入るなら入ってください。雨粒が中に入ります。早く閉めてください」

 

 キリッと冷徹な声で表情を固めた少女に促されて中に入り襖を閉める。

 少女は俺が入る間に座布団を一枚取り出して、畳に敷いた。


 「どうぞ」

 「ありがとう......ミリーだよね?」


 前にあった時は良く笑う子だった気がするけど、目の前の少女の表情は動かない。


 「それはあだ名です。私はミリアルド・コルー・スベーャン......」

 「うん......ミリーでいいよね」


 とてつもなく長い名前で自己紹介する、少女を遮る。

 少女は一度ため息をついてから


 「構いません」


 そういった。

 俺と少女は火鉢を挟んで向かい合っている。

 濡れた服が寒い......

 あとだんだん眠く......


 「脱いでください」

 「え?」


 いつの間にかに近くいた、ミリーが俺の上着に手をかけて服を脱がせようとしている。

 

 「え? 何? 君そういう子?」

 「はい。私はそういう子です」

 「えッ!? ちょっと!?」



 抵抗虚しく俺は服を剥かれた......ミリーは確か5歳年下だった気がする......そんな子が?

 いや......そんな子と?


 「待って! 俺は金髪が......ってあれ?」


 ミリーは服だけ奪うと物干し竿に服をかけて干しはじめた。


 「目の前でびしょ濡れの方を無視するような事は出来ません」

 「あ......うん。そういうことね」


 ちょっと期待した俺が馬鹿みたいだ。

 

 服が無いので裸のパンツ一丁であぐらを描いて少女ミリーを見る。

 少しだけ肌寒いけれどまあ気にしても仕方ない。


 「で? 何で泣いてたの?」

 「泣いてません。目にゴミが入っただけです」


 思ったよりもガードが高い......怒ってるのか機嫌が悪いのか......一緒か。

 まあとにかく、感情が分かりにくくて仕方ない


 「まぁ言いたく無いなら良いけど、笑ってくれない?」

 「は?」


 絶対零度の表情で聞き返されてビビる。


 「いやさ、君、昔は笑ってたじゃん......そんなにプリプリしてるより、笑ってる方が可愛いよ」

 「貴方にどう思われようと構いません」

 「そう......だよね」


 ガード高いと言うより嫌われてる気がする......

 空気が重い......異常に重い。


 俺はかけられた服をとってまだ湿ってはいたけれどそのまま着た。


 「帰るわ俺。じゃあね楽しかったよ」

 

 適当に挨拶して社を出る。まだ雨も降っているけれど、このドロドロと暗く息苦しい位なら濡れる方がマシだ。


 「そうですか......私も楽しかったです。また来て下さい。ここにいますので」

 「え? ......うん。たまにならね」


 お世辞......また来てと言いながら、本心は来てほしく無いだろう。真に受けるほど若くも無い。


 「いつですか!」

 「は?」

 

 だがミリーは違ったようで、本気で言っていたようで。


 「いつ来てくれるのですか?」

 「えーっと。いつか?」


 次の約束を取り付けようとして来る。


 「いつかでは駄目です......何時ならこれますか?」

 「ん......何時でも来れるけど......」

 

 実際、暇っちゃ暇だから、何時でも来れる訳だけど、ここまで来るのは案外遠い。


 「そうですか......なら明日も来て下さい」

 「まあ良いけど」


 それだけ言って社を後にした。

 これが俺と少女の始まりだった。ここから全てが始まった。

 

 が、俺はその後一ヶ月、ミリーの元にはいかなかった。

 理由は色々あったが一つは、龍神湖の巫女にはある使命があるからだ。


 それは、齢十六の時に龍神湖の龍神様に命を捧げる事だ。

 簡単に言えば贄だ。


 つまり、彼女ミリーは後一年もしない内に死ぬことになる。龍神様の貢ぎ物とはそういう物だ。

 村の風習で仕方が無いのだ。


 俺はそんな少女と話しをする勇気など出なかった。


 そんなある日の夜遅く、自宅の戸が叩かれた。

 俺の家に尋ねて来る人間など二年前に親が他界してから一度も無かったことだ。


 小さな村だが、夜遅かったので警戒しながら扉を開けた。

 すると、そこには小さい赤子を抱いた青い髪の少女ミリーが立っていた。


 「探しましたよ。サイトさん。こんな村外れに住んでいたんですね。お邪魔します」


 俺が呆気に取られている間に、ミリーがずかずか屋内に入り込んだ。

 勝手に暖炉に火を入れ、蝋燭に明かりをつける。


 俺の寝床にポテンとお尻を落とし座り込む。


 「そんな所に立って何をしてるんですか?」


 ミリーは、そういい首で目の前に座れと合図した。


 「いや、何してるのかは、俺が聞きたいよ。何で人ん家に上がり込んでんだよ!」

 「雨宿りです」

 「星空だよ! 流れ星見えるよ」

 「あら、私の家に勝手に上がり込んだ殿方が言いますか?」


 ギクリ。


 確かに、雨宿りでミリーの社に勝手に上がり込んだ。でも忘れていたんだ。

 ミリーが十五であることを。


 巫女は、贄になる一年前から一人で身を清める事になる。

 それがあの社だ。


 「悪かったよ。で? 何の用ですか巫女様」

 「その様子だと私のことは知っていたのですね。悪い人ですね」


 少しだけ驚いていたミリーが薄く笑った。


 「まあね。君有名人だからね」

 「そうですか。サイトさんの事は全く知りませんでしたが」

 「俺、無名人だからね。でもあったことはあるんだよ」


 少しだけ、ミリーとの距離感を掴んだと思ったらミリーが抱いている赤子が泣いた。夜泣きだ。


 そんな、赤子を揺らして慈しんでいるミリーはぽつぽつと話をした。


 「この子昨日生まれたんですよ」

 「ふーん。おめでとう」


 子供の誕生は素晴らしい事だ。素直に賛辞を述べる。


 「私の子ですよ」

 「そうだね、髪の色がそっくりだ」


 綺麗な青い髪をしているから言われなくても分かる。


 「でも.......父親は分かりません.......」

 「ヘビーな話し、しに来たの? 俺、そういうこと相談されても上手く答えられないよ」


 巫女はその血を繋ぐために子孫を残さなければいけない。

 よって何時でも男の相手を出来るように、一人になる。

 それがあの社だ。


 「でも、この村で唯一サイトさんの子では無いと断言出来ます」

 「まあね。それは~ね。してないもんね」


 村の男なら、あの社に巫女が居るならば何時でも出向き巫女に新たな命を注ぐ事が出来る。

 まあ、悪く言えばただの慰み物だ。


 「ミリーは結構可愛いから、沢山男が来たんでしょ? どうだった? 気持ち良かった?」

 「最低です。.......どうしてサイトさんは、来なかったのですか?」

 「行ったじゃん一回」

 「何もされませんでした」

 「そりゃね。泣いてる少女に手をだせと?」


 それに、他の男に抱かれまくった、少女がいくら綺麗でも抵抗がある。


 「俺は、親に好きになった人だけを抱きなさいと常々言われてたからね」

 「なるほど、私のことは嫌いだと言いたいのですね、可愛いと言ったのは嘘だったんですね。舞い上がった私が馬鹿でした」

 「まぁ。何でもいいけど、それで? 用件は何?」


 ミリーとの話をそろそろ切り上げたい。

 約一年ぶりに人と会話しているんだ、意外と疲れて来る。


 「.......お願いがあってきました」

 「断る」

 「まだ、何も言ってません」

 「だからどんな願いでも断るって意味だよ」


 巫女の子が生まれた以上、もうミリーに残された時間は少ないだろう。

 死に逝く者の望みなど叶えても空しいだけだ。


 「叶えてくれたら、私の体を自由にしていいですよ」

 「いやね。元々俺は君の体を自由にする権利があるからね」


 しないだけで。

 今、襲っても誰も文句は言わないだろう。

 そもそも、村の男達は皆襲った様だし。誰の子なのかわからなくなるほどに。


 「いえ。意味が違います。貴方に尽くすと言っているのです」

 「じゃあ、分かりやすく俺も言うよ、俺は君の願いなんて聞きたく無いと言ってるんだよ」


 理由は、ただ聞きたく無いからだ。

 いくら、交換に美少女の体を差し出されようと、俺を言外に愛すと言われようと。


 「俺が君の涙を拭ってあげられない以上君に何かをしたくない」

 「フフフ、やっぱり素敵な方です。私は貴方の様な方の子を産みたかった.......幸せに暮らしてみたかった」


 村の規則に逆らうつもりは無い、一定周期で贄は捧げられてきた。

 今更、ミリーだけ助けるなんて都合の良いことはしない。

 

 だから、ミリーに手を出すこともしない。

 ミリーの願いを聞くこともしない。


 「では、最後に共寝をしたいです。ただ共に貴方と寝たいです、好きな殿方と.......」

 「.......社まで送るよ。帰りな」

 「そんな! 私は.......私の最後の願いも聞いてはくれないのですか?」

 

 少女の瞳から涙が落ちた。その涙を見て。

 俺は.......


 「最後の願いだよ」

 「! はい!」


 突き放しきる事も出来なかった。

 その日ミリーと同じ布団で寝た。

 ミリーの赤子は何故か静かにしていた。


 朝、目を覚ますと、ミリーの姿は無く。置き手紙が置いてあった。


 『私の初恋の殿方へ、貴方がこの手紙を見る頃には私は龍神様の元に居るでしょう。どうか! どうか私の子をよろしくお願いします。私と同じ運命を辿らせないで下さい。名前はサリーです』


 部屋に、赤子の泣き声が響き渡った。


 「最後の願いだって言ったのに、妻も居ないのに子持ちになっちゃったよ」


 その日の早朝、巫女は龍神の元には旅だった。


 




  

 

せっかくですから読後の感想、評価お願いします。

そこまで読んでくれる方が居ないと思うので、貴方がしてください。


興味をあったらミッドナイトノベルズの『異世界のお約束が無視された!?』連載中も読んで見てください。

人気が出ればこの話の続きも書くかもしれません。

1ポイント行けば良いかな?


追記。


いかないね。かなしくらい、いかないね。

つまらないかな?


さらに追記。


感想評価ブクマありがとうございます。

誤字脱字修正しました。





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― 新着の感想 ―
[一言] ミッドナイトから飛んできて、読んでます。 御作、一つずつ読ませていただきますね。 感想ですが、贄ってやっぱりそういうものなのかもですね。 純潔を捧ぐといいながら、押し込めてその間は実は村の…
[良い点] ミリーがかわいいところ [気になる点] サリーの死因 [一言] >>追記... 元気出してください! 今までこの作品に出会わなかっただけで 読み終えたら面白かったです。 あとミリーをくださ…
[良い点] 新着の短編リストで見掛けたエッセイから辿り着きました。 読者様の少ないと言われるミッドナイトを主に投稿されているとは、オジsun様も奇特な方ですね。葛城の場合、ノクターンを中心に時々なろう…
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