第2話
俺は高校2年の初日、始業式からサボタージュを決行し、家に帰還していた。
そもそも、ああいう式典って誰のためにあるんだろうか?
生徒はもちろん先生だって、つまらない話を聞かされて面白いはずない。
校長だってつまらなそうに話聞く奴らに話してて楽しいもんか。
完全に利害は一致してるはずなのに…
昼からダラダラとバラエティ番組を見ていた俺は謎の罪悪感に苛まれつつ、
今日の行動を必死に正当化していた。
ガチャッ
突然、玄関の扉の開く音がした。
入ってきたのは小柄な女子。
黒髪は肩につかない程度、体は全体的に引き締まっており、運動していることが見窺えるが、不思議と日焼けの跡はない。顔立ちは整っており、それでいてクラスに一人はいるくらいの親しみやすい印象である。
彼女は、リビングの俺には目もくれず制服から動きやすそうな服に着替える。
まったくこちらに気づかぬ様子である。
ふっ、戦場では背後を取られてたら、終わりなのだよ。
俺は背後からそっと忍びより…
「わぁっ!……グフッ!!」
華麗なカウンターだった。
「何すんの?お兄ちゃん、ひく」
「悪かった、茉莉」
彼女… 志賀 茉莉 は俺の妹だ。
「あれ?なんかお兄ちゃん帰ってくんの早くない?今日高校午後まであるって聞いたんだけど…」
「なぜお前が知っている!?」
「ふふっ、ナイショだよ、お兄ちゃん♡」
語尾にハートでもつきそうな言い方だった。なんでも、♡をつければかわいかろうという考えは安易だぞー。
まぁ、実際可愛かったが。
なんでこの子、俺のスケジュール把握してんの?ファンなの?それとも、俺より俺の高校の生徒の知り合いが多いだけなの?
まぁここは、適当に誤魔化すしかない。
「あれだ、あれ、まぁ、いろいろあったんだよ。
それより茉莉、どっか行くつもりなのか?」
いそいそと外出の準備をする妹に問い掛ける。
「部活だよ、部活。いっかい着替えに戻ってきただけだし」
そういえば、茉莉は女子バスケの部活にはいってたんだったな。
「じゃあなんでそんなに行きたくなさそうなんだ?」
かくいう茉莉は、まだしまっていないこたつでごろんとなっていた。
アカン、これはダメになるやつや。
「もうちょっとしたらいくよー
でもね、部活でもいろいろあるわけですよ。去年の3年生抜けてから今の2年生が厳しくてさ。
さらに、こっから1年生入ってくるじゃん、そうするとその世話もしなきゃだしさー」
「その1年生が上手だったりしたら、もっと大変だろうな」
「そうなんだよー、さっすがお兄ちゃん、わかってるー」
まぁだいたいどこの部活でも起こるからな。
俺も…
「んじゃ、行ってくるねー」
「おぅ、行ってらー」
はぁ、部活か。
好きなことだけして世の中生きていけると思うなよ(学校教師の常套句)




