第1話
「ひとりだけ」優越感と 裏腹に…
ふぅ、いい句だ。
この句なら、お茶の川柳くらいなら通るかもしれんな。
それにしてもこの句哀しぎるかな…?
いやしかし、さっきの場面を見ればこんな句も詠みたくなろう。
高校2年になってすぐ。
クラス替えの発表に、年甲斐もなくはしゃぎ倒すクラスメイトを横目に、俺は掲示されたどおりの教室に入る。
黒板に貼られた席の表を見る。
俺の名前は 志賀 直木 だから…。
席は窓側の2列目だな。
そして席に着き、誰と話すでもなく昨日買った本を開き、読み始める。
ええぃ、鬱陶しい!
窓から差し込む光が本のページに反射し、俺を攻撃してくる。
それはいいんだ。いや、だめだけど。
俺の前後の席の奴らが俺を挟んで会話し出した。こいつら嫌がらせか?
「春休みどうだったん?」
「あー、あれね。いや〜超楽しくってさー。なんか部活の奴らと女子何人か誘って出かけね?みたいな?」
「うぇーい、超楽しそうだわー」
「ほんと楽しくってさー、女子みんな用事できて?誰も来なくて?男だけで2時間カラオケでパーリー?みたいな感じだったわー」
「うぇーい」
「やっふー」
みたいな会話があった。
けっ、こいつらリア充かよ。
ほんと憎いわー。会話ペラいわー。
ん?しかし、こいつらよく聞いたら『全日本女子のワガママ被害者の会』のメンバーだな。ちなみに会員数は、7000万人。(俺調べ)
会員は、男子だけじゃない。
なんか闇を感じ…いや、やめとこう。
そんなわけで本を読むのをやめ、学校で寝るときのいつもの体勢をつくる。
この体勢、人それぞれにこだわりがあると思うのだが、俺は右腕で頭を支えるスタイル。いっけん起きてるように見せることが…で…き…
はっ!?
目が覚めるとそこは異世界!!
なんてことはもちろんない…
ただ俺だけが残された最後の人類!?
みたいなことは思った。
だって誰も居ないんだもん。教室に。時間は10時28分。おそらく入学式か、始業式の真っ只中だ。
どうしよう、なんか途中からだとぜってー目立つし怒られる。つーか誰か起こせよ。俺の睡眠スタイルが仇となったか。まぁいいや、もう帰ろ。式典でなくてラッキー。
………ぐすん。
俺は持ってきた鞄を手に教室を後にする。
ここで一句
「ひとりだけ」優越感と 裏腹に…
こうして、志賀 直木 の2年目の高校生活がはじまった。
つい出来心で…(万引き犯の常套句)
なお、この作品は、現実に基づいて書きたいと思ってますが、「全日本女子のワガママ被害者の会」は実在せず、100パーセント創作です。誤解しないよう気をつけてください。