〈一章〉中二病生徒会長、参上(4)
火災現場から遠く離れたある場所で、立ち上る火柱を見下ろしながら、その人影は鼻歌を歌っていた。
「今日もよく燃える」
パーカーについているフードを深くかぶりながら、火に包まれた建物を眺める。耐久性を失いガラガラと音を立て崩れていく建物の様子がここからでも確認できる。
「そうだ。そうやって全てを燃やし尽くせ」
右手に持つライターの蓋を開けたり閉めたりする。そのたびに、乾いた金属音がカチンカチンと響く。
「世界の闇を燃やし尽くせ」
ギリッと音が出るほど奥歯を噛みしめ、燃え盛るそれを睨みつける。ライターを握る手にも力が入っている。息が荒くなる。
人影は、火だるまとなっている建造物を呪うかのような目で見つめる。どす黒く淀んだ瞳だった。
「ありとあらゆるすべてを根絶やしにする。確実に、完璧に、完全に」
ライターの蓋を開き、そして火を灯す。ターボライターをさらに改造しているのか、ライターから放出されている火は、普通に市販されているライターのそれとは比べ物にならないくらい大きい。
火が人影の顔を照らす。
人影は男だった。年齢は牡丹や恋よりも少し上と言ったくらいだ。二十歳程度と推測できる。整った顔立ちのその青年は、口元を緩ませて笑う。
「俺は復讐者だ」
そしてライターの蓋が閉じられると、再び青年の顔が闇に埋もれる。
「待っていろ。もう少ししたらお前らの番だからな」