どっち?
拝啓 読者様
無事に道までたどり着いたので、こうして記せております。
ここに来るまで獣の遠吠えを二度ほど聞きました。
いずれもすぐ近くじゃなさそうなことくらいしか安心材料がありません。
戦えばいいじゃないかと考える人もいるかもしれませんが、十中八九無理です。
私、運動は並以上に出来る方ですが、格闘技は習ったことがありません。
大体、プロボクサーだって野犬に勝てないって聞いたことありますよ。
プロボクサーより確実に弱い私が、勝てるはずないじゃないですか。
そんなわけで、三十六計逃げるに如かず、です。
まあ、相手の位置が分かんないので、もしかしたら飛んで火にいる夏の虫になるかもしれませんが、それは考えないようにしましょう。
さて、道にたどり着いて、わかったことがあります。
轍がありました。
これは最低でも車輪が開発されるだけの文明文化があるということです。
月が三つもある世界ですから、もしかしたら文明すらないかもしれないと思ってました。
でも、これで道の先には町があることが確実です。
西と東、どっちに行きましょうか?
どっちも同じような道が、地平線まで続いています。
丘から見た時も、ずーと続いていましたから、きっと20キロくらい先まで何もないでしょう。
コイントスで決めるのは止めましょう。
一つのミスが命に関わりそうな所で、運に任せたくはありません。
・・・・・・西に行きましょう。
先ほど聞いた遠吠え、東側から聞こえた気がします。
本当に、そんな気がするって程度ですが、運に任せるよりきっと良いです。
20キロ先まで何もないことはわかってるんです。
頑張って歩きましょう。
人間の歩く速度が大体時速5キロくらいなので、4時間くらいは何もないのですね。
フルマラソンに出たこともあるし、20キロくらいなら歩けます。
ちなみにタイムは5時間30分でした。
まあ、完走が目標でしたから。
それでは、また。