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就寝前

 夕飯が終わる頃には、日は完全に沈み、空には青色の月と黄色の月が浮かんでました。

 これから何かをするということはなさそうで、皆平屋に戻って就寝するようです。

 ところが、ここで一悶着起こりました。

 私の掃除が途中で終わったため、綺麗な所と汚れている所の差があったのです。

 いえ、一通り掃き掃除はして土は無くなったのですが、雑巾がけが途中でして。

 そのため、夜の少ない光源でもわかるくらいには違いがあったわけです。

 当然、皆さん綺麗な所で寝たいようで、場所の取り合いが起こりました。

 

 これは、ちょっとマズイかもしれないと思い始めたとき、一人の男が平屋に入ってきました。

 髭もじゃで眼光が鋭いマッチョです。


 一応言っておきますが、この世界の男はマッチョばっかりってわけじゃないんですよ?

 ここにいる人たちは、私のような中肉中背が多いです。

 ただ、マッチョが目立っていて、私がこうやって記すようなことをするだけです。。


 話が逸れましたが、髭もじゃのマッチョが入ってきた途端、それまでの喧騒が一瞬で収まりました。

 彼はずかずかと奥に進むと、綺麗な場所にどかりと座り込みました。

 誰も文句を言いません。

 どうやら、彼がここのボスのようです。

 そして、一言二言みんなに聞こえるように言うと横になってしまいました。

 何を言ったかは、わかりません。

 ただ、それを聞いた男たちは、解決法が見つかったとばかりに争いを止めました。

 そして何事かを話し合うと、掃除していた時に居た男の一人が私を指さしました。

 それに釣られて、みんなが私を見ます。

 総勢42人の男たちに注目されて、動揺しない私ではありません。

 一歩、二歩と後ずさりしてしまいました。

 何かあった時逃げれるように出口をちらりと目にしましたが、彼らも逃がすつもりはなかったようで、私の後ろに素早く回り込んだ男が私の肩を掴んでその場に拘束しました。


 そこで観念して、とにかく成り行きに任せようと心を決めたところ、一人の男が私の前に来て何かを言いました。

 勿論、わかりません。


「すみません、言葉わかんないんです」


 通じないと分かってますが、日本語で言ってみました。

 ここで初めてこの目の前の男は、私に言葉が通じないことに気づいたようで、私を指さしながら戸惑ったように何か言いました。

 さながら、初めて外国人に会ったかのようでした。

 再度、周りに何かを言いますが、みんな首を横に振るばかりです。


「おい、誰かこいつの言ってる言葉が分かるか?」

「いや、聞いたことない」

「俺も」

「というか、ここにいる奴で外国語がわかるような学のある奴がいるわけねえじゃん」

「そりゃそうだ」


 想像ですが、こんなところでしょうか?

 ともかく、私に話しかけている男は何かを伝えようとしているのですが、私の方もさっぱりわかりません。

 段々とイライラしてきているのがわかります。

 そしてついには怒りだし、私に拳を振り上げました。

 避けようにも、私は背後の男に肩を抑えられ動けません。

 顔に向かってくる拳に恐怖を覚え、私は目を瞑りました。


 しかし、一秒、二秒と待っても痛みは来ません。

 私は恐る恐る瞼を開くと、拳は目の前で止まっていました。

 そして止めたのは誰であろう、顔の怖いマッチョでした。

 横から男の腕を掴み、何かを言っています。

 それに対し、男は反論していたようですが、顔の怖いマッチョが掴んでいた腕に力を込め始めると、痛みで悲鳴を上げながら何か言いました。

 その言葉に満足したのか、顔の怖いマッチョは男の腕を離すと、男の腕にはくっきりと手の跡が付いていました。

 すごすごと男が離れるのと入れ替わりに、スキンヘッドのマッチョが私の所にやってくると、私に箒とボロ布(雑巾がけに使っていた物)を渡し、黙って床を指さしました。

 ここで、やっと私は彼らが私に何を言っていたのか理解しました。

 要は、全部掃除しろと言っていたのです。

 私は反抗することはせず頷くと、掃除を再開しました。


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