どこよ、ここ
拝啓 読者様
いったいどうやって話を切り出すか、大変迷うところではありますが、単刀直入に書きましょう。
私、異世界に飛ばされたようです。
ホントに、本当に気づいたら草原に居ました。
手術で全身麻酔をした体験なんかでよく聞く、「これから麻酔しまーす。はい、3、2、1、手術終わりましたー」って感じです。
手術受けたことないけど、本当に「過程」がすっ飛んでました。
飛んでしばらくは茫然としてましたね。
こう、脳の処理が追いついていない感じです。
右見て地平線まで続く草原、左見て地平線まで続く草原。
前見て地平線まで続く草原、後ろ見て地平線まで続く草原と小さな丘。
下見て膝下くらいまで生えてる雑草、上見て満天の星空と赤い月と青い月と黄色い月。
取り敢えず、自分の頬を抓りました。
痛かったです。
その痛みのお陰か、じわじわと自身の置かれている状況を脳が理解し始めました。
30分後くらいでしょうか?
一頻りパニックを起こした後、一先ず落ち着いた私が居ました。
そんな私は、何が起きたのかは置いといて、自分の身の確認をすることにしました。
恰好は、少し色あせた赤のTシャツに、青のデニム? Gパン? とにかく長ズボンを履いていて、靴は3000円で買った黒のスニーカ。
あ、誤解なき様に言っておきますが、私は男です。23歳の大学院生です。
持ち物は財布(残金5887円と免許等のカード類)、スマホ(リンゴ社の5世代目)、以上になります。
まずはスマホで家族に電話をかけました。
繋がりませんでした。
圏外でした。
もちろん、メールもダメでした。
ただ、ネットの「あるサイト」だけは繋がりました。
そう、読者様が見ている「ここ」です。
ならば、これを使って家族や友人に連絡を取れないかと思いましたが、ここのメール機能はサイト内限定ようで、外には連絡出来ません。
正直、詰んでいる気がしてなりません。
しかし、せっかく繋がっているサイト。
日記代わりと、いつの日か家族や友人が気づいてくれることを願って、自身の状況を綴っていくこととすます。
取り敢えず、背後にある丘の上に行ってみようと思います。
高いところに行けば遠くまで見渡せますから。
どこかに町が見えることを期待しましょう。
それでは、また。