第三楽章
掲載日:2015/01/03
夢の中で飼っていた鳩が逃げ出した。
握りしめる白い歯。あの、クラゲのように揺れながら隙間をねってくる太い腕。
色という色が沸騰して破裂した様な狂気の笑み。
スローモーションで蠢き盛る火が、至る所で闇を食っている。人のそれぞれを包み込んでいた住居は穴だらけになり、何かを無くしていた。
戻ることは出来ない。もう戻ることは出来ない。戻ることは出来ない。もう戻れない。
もう戻れない。もう戻れない。もう戻れない。もう戻れない。もう帰ることは出来ない。もう誰もいない。
分からない。
雨音が地面からわき立ち、無数の手が伸びてくると次々に意志を咀嚼する。
渦という者は、このような場所で生まれているのかもしれぬ。
全てが終わった後、切っ先の鋭いレイピアが虚空に踊る。風よりも早く走り、祈るよりも穏やかに進み、鏡よりもはるかに世界を映し出す。
硝子玉に閉じ込められた水が割れて、光が到着した。
どこかにある磁石は回転し、アラベスクに包まれた喝采をねじ伏せた。
御霊は、憂いに満ちている。




