第七話
キリエのおこなった内政の内容です。次話から細かく書きたいと思います。
アンクセス王国の西の国境付近を騎乗し、ひた走るBランクパーティー「銀狼の爪」の姿があった。アレドでの謀略が失敗したと判断した時点で街中に潜んでした彼らは、アンクセス軍の壊滅の知らせを知ると、祭りの騒ぎに乗じてアレドを脱出し、ギリア大陸の中央に存在するキリエの生国でもあるセントリア王国を目指し馬を走らせていた。
「くそ、くそなんで俺様がこんな目にあわされるんだ。これも全部あの魔力の無い無能野郎のせいだ。いつか絶対に殺してやる。耳を削ぎ、目をくり抜いて、生きながら内蔵を掻き出して苦しませながら殺してやる」
「銀狼の爪」リーダーのアルフレッドは馬に八つ当たりとばかりにムチを打ち付けながら、恨み言を吐いておりその他のパーティーメンバーも同様に謀略が成功すればAランクに昇格できたはずであったのに、失敗により追われる身となった自分たちの境遇に文句を垂れ流しており、周囲の警戒も散漫になっている。
とにかく追手から逃げることを考えていた「銀狼の爪」のメンバーであったが、後方の上空を飛翔する存在には全く気がついていなかった。RQ-1 プレデター、捕食者、略奪者の異名を持つ高性能なUAVである。「銀狼の爪」を追跡するRQ-1 プレデターの総数は四機であり、機首にある赤外線カメラにより「銀狼の爪」を発見し現在はいつでも攻撃可能な位置についている。プレデターは通常、無人機4機、地上誘導ステーション、衛星および55人の要員で運用されるが、現在はジェネルがその大部分をになっている。
「見つけたで、往生せいや~」
そしてジェネルの攻撃命令を受けたプレデターは腹に抱えたAGM-114ヘルファイア×2を「銀狼の爪」目掛けて全弾発射する。合計八発のヘルファイアミサイルが着弾し辺りに轟音が響いた。任務を終えRQ-1 プレデターはジェネルの管制により基地へと帰投すべく進路を変えた。後に残るのは大きな焼け跡のみであり、生存は絶望的であった。
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前日のお祭り騒ぎにより酔いつぶされたキリエはギルドの来客用の部屋で目を覚まし、ジェネルから「銀狼の爪」への対処について話を聞いていた。
「という訳であの腐れ外道どもはこの世から消え去ったで」
キリエの手元にある端末からジェネルの得意げな声が響いた。
「仕事早すぎだろジェネル…、まあ仇をうってくれたんだよなありがとう」
「別にワイがやりたかったからやっただけやで、それより街の連中には呆れたで、あんなにキリやんの
こと差別しとったのに手のひら返したように態度変えよったからな」
「人なんてそんなもんだろ、アレドの街は開拓者達だから、礼も言ってもらえてるが他の国なら暴言を吐かれて、石投げつけられてるよ」
「キリやんの境遇はほんま面倒やな、まあ魔力が無い者に関しての認識も地道に変えていくしかないんやろうなあ」
「「はぁ~」」
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アンクセス王国を併合してから、5ヶ月ほどが経過した。幸い周辺国家からの攻撃などはおこらず、キリエは内政や軍備の強化に力を注いでいた、アンクセス王国を解体し、軍事国家セントバレルを建国した。貴族は領内での不祥事や横領などの長年の腐敗により溜め込んだ罪を摘発し、そのほとんどを改易に処し国外追放にした。
以下は国内で行われた大まかな施政である。
1.軍務省や財務省、魔法省など省庁を創設し既存の官僚を各省庁に振り分けると共に、兵員の中から事務方に向いている者を出向させるとともに在野からも人材を募集した。
また財源を確保するために、セントバレル軍工廠において、一部の生産設備を使用し、石鹸や化学繊維のなどの化学製品、精錬された鉄鋼、望遠鏡などを商人達に販売し膨大な利益を上げつつある。(電子機器など軍事利用されそうなものは販売禁止にしている)
2.農業に関しては、貸与する形で工廠で生産した農業機械を街や村に与えると共に、これまでバラバラに耕作されていた耕作地を整理することにより、肥料などと合せることで収穫量の増大を図っている。
3.軍事的には、兵員は1万までに増大しており、各種兵器に関しても充実してきている。またアンクセス王国はドゥーム平原の戦いによりその多くが戦死したため二千名ほどが治安維持のための警官として再雇用された。各貴族が持っていた領軍については解体された。さらに軍事衛星をジェネルが定期的に打ち上げていたため、稼働しているのが4機あったが、それを10機に増やすことでカバーできる範囲が大幅に上昇しており、軍事的に取れる行動を大幅に増やせるようになっている。
4.また鉄道網の敷設や王都の区画整理などをおこないスラムについては孤児達は親切した孤児院に入れ、住人たちは仕事を斡旋し、身体の障害がある者には支援をおこなうなどスラムの縮小、将来的には消滅を目標としており、合わせて領内の差別の撤廃に努めている。
毎日更新している人は本当に凄いと思い知らされる今日この頃です。