第五話
ヒロインの名前をいつの間にかフェリアと打ってたのでフェリアに統一しました。他にもいろいろバラバラになっているので見つけ次第順次直していきます
キリエ達が工廠の上空に到着すると、そこには軍事基地が完成しつつあった。3000m級の滑走路が2本と4000m級が一本あり管制塔が傍に建てられている。また多くの格納庫やドッグが立ち並び、少し離れた所では兵士用の宿舎の建設が始まっている。多くの工兵が重機を駆使し、数百体の整備用ロボと共に急ピッチで作り上げたのである。基地建設が一段落したこともあり、少し離れた場所では、屈強な男達が食事をしながら楽しそうに会話や自分にあった方法でくつろいでいる。フェリアやダグは物珍しそうに辺りを見回している。
また、滑走路からは、E-2早期警戒機やF16が発進しつつあり、輸送ヘリからアレド近郊で買い付けた食料を降ろす商人に変装した兵士達がタブレット片手に納品の照合をおこなっており、基地内は非常に慌ただしい。先導する兵士の後に続き、キリエ達は新しく出来た基地の建物へと入る。途中、キリエが兵士で小声で質問した。
「基地ができるのが早すぎないか?」
質問を受けた兵士は突然質問されたことに驚きつつも質問に答えた。
「滑走路や、管制塔などは先日までにある程度できていましたし、格納庫などの設備は工廠でほとんどの部品を生産可能ですので、後は人海戦術で組み立てるだけです。整備用ロボも大量に動員しましたしね」
「そうゆうものか?」
「そうゆうものなんです」
質問を受けた兵士は、前を向き案内を続け、これ以上は聞けない雰囲気を漂わせている。途中、フェリアとダグに基地や工廠のことを説明しつつ、キリエ達は士官達の待つ部屋へと入室した。
「キリやんえらい大変な目にあったな。ご愁傷様やな~」
ジェネルが少し心配そうに、キリエに話しかけた。周囲の士官達もキリエが無事戻っため安堵の表情を浮かべている。無事を喜ぶ声が収まると現状の報告がされつつ、アレド及びアンクセス王国への作戦会議が行われた。会議の間でダグやフェリナの意見も取り入れつつ会議は順調に進み、キリエが結論を言う。
「では、作戦を確認する。作戦概要はアレドにおいてヘリボーン作戦を決行し、早急にアレドの主要拠点を占拠し、ギルド長を拘束、ダグさんがギルドを纏める間に、アンクセス王国軍をアレド近郊のドゥーム平原で撃破する。また作戦に必要な兵器及び物資は俺の腕輪に収納後、アンクセス王国との会敵ポイントにて腕輪から出す。ダグさんたちはアレドの掌握をお願いしますよ」
ダグは太い両腕を組みつつ、神妙な顔で答えた
「了解した、早急にアレドの行政を掌握しよう、幸いあのギルド長はギルド内でもアレドの住民についても評判は最悪だ。アレド内をまとめ上げるのは容易だろう」
ダグの隣ではフェリアが続いて訴えた
「キリエさん、お願いです私も連れていってください」
「フェリア、俺が今から行くのは戦場で、殺し合いが行われる場所だ。そんな場所に君を連れて行くわけにはいかない」
キリエは少し驚きながらも、フェリアを思いとどまらせようと反論した
「いいえ、だからこそ私が必要なんです。戦場では多くの人が怪我をします。その時、迅速に治療できるかで救える人の数は大きく違うんです。私は、一人でも多くの人を生かすためにもキリエさんに付いていきたいんです。例えそれが偽善と呼ばれても」
キリエとフェリアは数分間、無言で見つめあったが、フェリナの縋り付くような目線にキリエが耐え切れず、幾つかの条件を出すことでフェリアの同行を許すことにした。
「フェリア、君を連れては行くがこれから出す条件に必ず従えるなら君を連れていこう。まず第一に臨時の救護所を作るから、衛生兵達と共に治療をし、勝手な行動は謹んでくれ、第二に、護衛の兵士の指示にはどんな場合であっても従うこと。そして最後に、決して無理をしないことだ。君が傷つけば悲しむ人が大勢いるんだからな」
「解りました、その条件に従いますキリエさん」
キリエは頷くと、作戦の発令をおこなった
「作戦の開始は今夜、00:00に開始する。各員の奮励努力を期待する」
その後も、作戦内容の議論が勧められ、それと並行して作戦準備が進められた。キリエは必要な兵器や物資を腕輪に収納していき、ダグはギルドを強襲する部隊と突入計画の詳細を詰めており、フェリアは衛生兵にトリアージなどの戦場での医療の知識を教わっている。CH-47にはアンクセス王国との会敵ポイントへと先行する工兵部隊が搭乗しており、陣地の建設のために今まさに飛び立とうとしている。基地内が非常に慌ただしくなり戦闘へ向けての準備が着々と進められていった。
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その頃、アンクセス王国軍は一路東へと侵攻を開始しており、東方の開拓地との国境付近まで接近していた。現在は陽も傾き始めたこともあり、野営の準備が進められている。野営地の中心には一際大きな天幕が張られており、中ではアンクセス王リガードを中心に軍議が進めれていた。もっとも王も王子達や家臣も此度の戦の勝利を疑っていないため緊迫した雰囲気ではなく、酒を飲みながらの宴会のような軍議と呼べるかも怪しいものであった。しかし、その中で唯一酒や豪勢な料理に手を付けずにいる者がいた。王の庶子であり、かつ中隊長の位を持つ、アーガイルという青年である。
(父上達はもうすでに開拓地を手に入れたきでいるのか、他国からの干渉や不測の事態がありえるというにのに呑気なものだ。自領内も賢王と呼ばれたお爺さまの時代に比べ圧倒的に疲弊しているというのに、長期戦となれば国が崩壊してもおかしくないというのに)
アーガイルが内心を表情に出さず、考え事をしているとリガード王が顔を真っ赤にしつつ話し始めた。
「此度の戦では全て略奪行為を許す。存分に励むが良い」
この発言により、天幕内に歓声が響き、このリガード王の発言はすぐに野営地内に急速に広まっていった。アーガイルは喉まで出そうになった王への罵声を抑え一人天幕から退席した。
(これから国土としようとする地で略奪行為を許すだと何を考えているんだ父上は」
この時代、戦争による略奪行為は禁止されているわけではなく、兵士の権利として認めらている。しかし今回の侵攻では迅速に制圧をしたあと、諸外国に付け入る隙を見せないようにするべきであるのに、そこに躊躇せず、ただ東方の開拓地を手に入れることだけしか頭にない父や兄達、祖父時代の家臣を排斥したことにより、今では甘言だけを弄する家臣たちにアーガイルは溜息をつき、その現状を変えることのできない己の無力さに悔しさを覚えた。
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23:45 キリエ達はCH-47に突入部隊と共に乗り込み、服装や装備もキリエとダグは突入部隊に準じた物になっている。フェリナは一足先に陣地の方へと向かうために、キリエ達とは違う機体に護衛と共に別行動をおこなっている。
すでにアレドが見えるところまできており、ヘリボーン作戦のためにギルドの屋根を目標に向かっている。ヘリの爆音が響くため、迅速な作戦行動が求められる。一応、ヘリボーンの訓練を受けたキリエとダグの二人であるが、その顔には緊張の色が見える。ダグが何かを言おうとした瞬間
「GO」
突入舞台の隊長がサインを出し、突入隊員達が次々とロープを伝って降下を開始するキリエとダグも覚悟を決めた顔で降下するが下腹部がヒュンとなる。降下後は途中ある部屋を制圧しつつ、ギルド長の部屋を目指す。やけに青ざめた職員を一箇所に集まるように指示を出し、ギルド長配下の冒険者達は拘束していく。五分も経たないうちにギルド長室へとたどり着きドアを蹴破る。
「ギルド長、貴様を拘束する。」
ダグが部屋に入ると同時に言い放つと、ギルド長の護衛の冒険者が酒の瓶を投げつけてくると共に剣や杖など自分の武器に手を伸ばす。しかしその瞬間、連続した銃声とマズルフラッシュがおこり、そこには肉塊となった死体が転がっていた。エンデルクギルド長は自分の机の下に頭だけ突っ込んで震えている所を引きずり出され、キリエとダグの前に座らされた。
「お前たち、こんなことをしてタダですむと思うなよ」
錯乱し、喚き散らしだすギルド長であったが、突入部隊により、地下の牢へと押し込められた。その後、ギルドの一階の酒場に辿り着いたキリエ達はそこに広がる光景に絶句した。そこには、大量の冒険者達の死骸が散乱していたのである。アンクセス王国への抵抗力を失くすために、ギルド長と銀狼の爪が酒に睡眠薬を混ぜ、その後殺戮を尽くした結果であった。ギルド員達が以上に怯えていた原因がこれであった。
全員が呆然としている中、キリエが一人一人を確かめ始め、ダグや突入隊員に声をかける。
「まだ息のある人がいるかもしれない、確認するぞ」
キリエの声で、動き出し確認を取ると重傷ではあるが数人の生存者が存在した。なで斬りにしていったので急所が外されていることが幸いしたのである。ダグがギルド職員を呼んできて急いで救護院へと運んでいくように指示を出す。その時、遠くから物を破壊する音と共に外へと飛び出し逃げていく銀狼の爪のメンバーの姿があった。
現在の状況では、銀狼の爪の追跡より、アレドの掌握が優先であったので、ダグを臨時のギルド長にアレドの掌握が行われ、日の出には、一応の体裁を整えることができた。ダグにアレドのことを任せ、キリエはアンクセス王国との決戦の場であるドゥーム平原へとヘリで移動した。
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ドゥーム平原はアンクセス王国からアレドまでの途中にある平原でありその大きは十キロ四方である。また左右には森が広がっている。キリエ達が到着すると、簡易ではあったが土嚢で陣地が構築されており、そこには幾重にも鉄条網が貼られ、十字砲火を浴びせられるようにM2重機関銃が配備されている。キリエは現場の指揮官と兵士を集めると、その場に腕輪に収納していた兵器や物資を出し、兵士達がそれらを適切な場所へと運び、配備していく。
全てを出し終えて、一息ついた所へバールマン少佐が現れ、後二時間ほどでアンクセス王国軍が視認できるようになると報告してくる。キリエは礼を言いつつ、救護所へと向かう。そこではフェリアが衛生兵と共に、医薬品や包帯などの物資をダンボールから出していた。フェリナはキリエを見つけると衛生兵に声をかけてからキリエの元へと小走りで走ってきた。
「キリエさん、お怪我はありませんか?大丈夫ですか?」
死体の処理をアレドでしたため、体に血の臭いがついていたからであろう、フェリアはとても心配そうにキリエを見つめている。
「怪我はしてないよ。フェリアもご苦労様、戦闘が始まれば会えなくなるとは思うけど、基地での約束は絶対に守ってくれよ」
「それは、もちろんですがもし怪我をしたらすぐ私の所に来てくださいね。絶対ですよ」
その後、フェリアとたわいない会話を楽しんだあと野戦指揮所へと向かう。途中、端末からジェネルの声が響く
「キリやん、フェリアのことどう思ってるんや?」
Σ(゜д゜;)
「いきなりなんてこと聞くんだよジェネル。俺はその、あのえ~と」
「は~、いいわその反応で大体解ったから。わかり易すぎやキリやん」
キリエが下手な言い訳をしている内に野戦指揮所に辿り着く。敬礼してくる指揮官達に敬礼を返し、状況の報告を受けるのであった。
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アンクセス王国軍は斥候により、進路上のドゥーム平原に謎の部隊が展開している事を知ると驚いたが、その数が1000程度であると知る一気に好戦的な雰囲気が周りを支配する。その一方でリガード王の機嫌は悪化の一途を辿っていた。さきほど、合流した銀狼の爪によりギルド長が捕縛され、アレドが掌握されていないことを聞かされており、なおかつ、新手の障害の出現に不機嫌を隠そうともしない。そんな様子をアーガイルが一歩引いた所から冷ややかな目で見ている。将軍の一人がリガード王にお伺いをたてる。
「陛下、敵軍を粉砕し、直進するということでよろしいでしょうか」
「当たり前だろう、全軍前進、進路上にいる弱小部隊を捻り潰すぞ」
「お待ちください父上、敵の正体も分からないままの攻撃は避けるべきです」
アーガイルが無策な攻撃を止めさせようと父王に訴えた。
「この臆病者が、貴様の舞台は要らん、後方に下がっておれ」
忠告は受け入れられず、進軍は再開された。その先に何が起こるかも知らずに
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「キリやん、来でアンクセス軍や、奴らノコノコと現れよった」
「ああ、しかしこちらの正体を確かめもしないとは、何考えてるんだ?」
ジェネルの報告にキリエが相槌をうつ、その間にもアンクセス軍は陣形を整えていく。見ている限りかなりの練度である。遥か後方に待機している部隊も見える。
「総員、撃鉄を起こせ!」
キリエが無線で命令を発すると同時に、アンクセス軍の突撃が開始された。騎馬を先頭に先方8000が突撃を敢行してくる。途中攻撃魔法による炎や氷が度々飛ばされてくる。
「引き寄せてから撃て」
前方の中隊長が叫んでいるのが聞こえる。しばらくすると、敵軍は鉄条網まで辿り着くがその瞬間左右から、M2重機関銃50門が一斉に発砲を開始した。完璧な十字砲火の形となり敵兵8000の多くが血飛沫をあげながら倒れていく。それと同時に、空飛ぶ戦車の異名を持つAH-64Dアパッチ・ロングボウ10機がアンクセス軍本隊1万5000の後方より現れ、機首下にM230 30mmチェーンガン及びハイドラ70 FFARロケット弾を斉射する。
後方からの大火力による攻撃により、一瞬にして数千に近い死傷者を出した。アンクセス軍は平原中央へと逃げ場を求めて前進する。しかしそこにレオパルト2A6戦車20両による55口径120mm滑腔砲による榴弾が発射され、それと同時にM109 155mm自走榴弾砲10両によるMRSIがおこなわれ残った本隊もその多くが壊滅した。
一時間も経たない内に、アンクセス軍はその多くが死亡、もしくは重軽傷を負い殲滅された。生き残った兵士達は前後を塞がれ逃げるように左右の森へと逃走していったが、数分後には、森の中に仕掛けられたM18クレイモア地雷が内部に搭載された700個の鉄球を撒き散らし逃走してきた兵士の命を奪い、また傷つけていき、最後には森に逃げ込んだ者に生存者は居なくなった。
アンクセス王国はほとんどの兵を失い降伏した。後にこの戦いはドゥーム平原の殲滅戦という名で呼ばれることとなり、各国を震撼させることとなった。
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