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第5部 猿芝居(後編)

 表現会場のフロアーには俺達よりも多いまほろばメンバーが集まり遠藤香織が脱退するという話でざわめきトモちんは「待て! 全員揃ったら話すから!」とざわめきに対して大声で叫ぶ動揺を見せていた。


 そんな中へ周りの雰囲気に目もくれずぶらり立ち寄ったかのようにティファニーが笑顔を見せてステージ前へとやって来た。

「もーにん!」

 今来たばかりのようだ。

 俺達は「おはよう!」とステージ上から揃ってティファニーへと応えた。

「ねぇねぇ、ちゃんと聴いてくれた? ラジオ?」


 半年ほど前からティファニーは不定期で『今宵、星降る時間』と言うネットラジオ(因みに基本テレビスタイルのラジオ番組)を始めていた。それが不定期ではあるんだが放送時間は毎回深夜の1時と決まっていた。しかも生放送と来る。

 夜は得意でない俺は初回くらいしか観ていなかったが昨晩の放送で例の曲を流すと桂介からメールで知らされ録画して今朝、俺は通勤途中でスマートフォンを利用して観た。

 やっつけ仕事の曲は及第点だったなと確認はさせてもらったが驚いたのが勝手にジャケット写真なんてものが作られ、その上言ってもいない『宇宙初公開』というフレーズまで付けて紹介されていた。どう考えても奴の仕業だ。桂介の野郎は何を企んで勝手な事をやってやがるんだと俺は呆れた。


 そういう事で一応ラジオを聴いていた俺はティファニーに対し「もちろん」と即答した。が、誠の奴はご丁寧に余計な事をティファニーへ言った。

「こいつの話、嘘。寝てた」

「うわっ! 何それ?」と大きく顔を歪めたティファニー。

 俺は慌ててティファニーへ「ウソウソ、ちゃんと聴いたって」と誠の言った事を否定すると更に誠が「アーカイブで」と更に余計なものを付け足した。

「ええっ!? どうせならちゃんとライブで聴いてよ」と言ってティファニーはオーバーな驚き顔を作りケラケラと笑った。

 俺達はティファニーの性分を分かっているのでいちいち真面目に応えていたら却ってティファニーの気を悪くする。これは言わば挨拶の様なものだ。


「何でもいいからよぉっ! 手が空いてる奴は椅子運び! で床掃除な!」

 いきなり煩いほどのトモちんの叫び声が表現会場に広がり辺りを一気に静めた。それに対しまほろばの皆は「はぁ……」とすっきりしない表情で応えていた。

 するとここで何を言い出すか今さら的な発言をしたのが晴男くん。

「で、なんで僕らがいつもソルティーさんの手伝いやってるんです?」

 俺達の目の前で掃き掃除していたさくらちゃんは手を止めることなく淡々と晴男くんへと答えた。

「当たり前じゃん。古い付き合いなんだもん。座長とトモさんの学生時代から」


 すると誠が話に入り俺も続いた。


誠 「さくらちゃんの言う通り」

俺 「昔は俺らもまほろばの手伝いやってたんだぜ。でもよぉ、さくらちゃんが入る前くらいからかなぁ、徐々にまほろばの人気が上がってきて団員も増えてきたらアイツ、「お前らの手は要らねぇから」って言いやがって。つれねぇ奴だと正直思ったぜ」

誠 「結局ウチらは四人しかいないから四人で全部処理してるけど、皆んとこは何だかんださぁ、いつも客演だの照明さんだ、音響さんだとか言っていつも人がいっぱいいるからな」

俺 「だよな。だからウチらのようなバンドがソロライブやる時は人手が足りないって訳でさぁ。で、昔からのよしみでお互い足りないところを支え合ってたんだけどな」

誠 「そういえば! 昔はさぁ、大道具作りにも参加したこともあったよな」

俺 「あったあった。そういえば。組みもばらしも昔は必ず手伝ってたんだぜ、晴男ちゃん」

「へえー」と晴男くんが大きく何度も頷いた。俺はまほろばとの昔を思い出しお喋りになっていた。

「バックなんざCGで済むだろうにわざわざ時間かけて大層なものを作る、お宅の座長さんはリアリティーが無いとか抜かしやがって。芝居にリアルもアンリアルも無ぇだろうってそん時は笑ってやったけどな。結局いつも人手が足りない、時間が無いって俺らに泣きついて来てたんだ、あの頃は。ティファニーはよく知ってるよな?」

 この頃にはほうきで掃除を始めていたティファニーは軽快に応えてくれた。

「ええ。もちろんっ! あの頃は純粋に皆で集まってワイワイやってるのが楽しかったなぁ」

 すると晴男くんはティファニーへと歩み寄り悪戯っぽく聞いた。

「なんですか、ティファニーさん。そんな今はつまんないみたいな?」

 するとティファニーは晴男くんへと言った。

「もちろん今は今で楽しいけどさ。でも今はプロ意識が強くて、ちょっと嫌な緊張感が続くことが多かったりするし。昔はサークル感覚だったから」

 ティファニーの話を聞いて俺は皆も奴のやり方に不満抱えてるんじゃないかと思い、ステージ反対側、俺の真正面の壁にもたれ掛かり俯いていたトモちんへマイクを通して言ってやった。

「俺思うんだけどさぁ。桂介の奴。アイツ一人天狗になってねぇか? なぁ、トモちん?」

 俺の言葉がはっきり聞こえていたはずのトモちんだが微動だにせず俯いていた。この時フロアーにいるまほろばの皆はトモちんに注目していた。

 俺はやっぱり桂介のやり口に相当腹を立ててるんだと思いトモちんへと続けて言ってやった。

「その顔、トモちんもそう思ってんだろ? アイツ、自分好きの自信家だからな」

 すると突如トモちんは顔を上げ俺を突き刺すように睨み付け意外な言葉を言い放った。


「自己顕示欲の塊はお前だろ」


 俺達の猿芝居ごときでまさかこれ程までにトモちんを動揺させ、こんな言葉を吐き出させるまでに至るとは思ってもみなかった。


(これは芝居なんだぜ? トモちん。マジかよ、トモちん……)


 俺は心(えぐ)られ虚しさを味わわされた。

劇団まほろば一座の演劇作品「つもるはなし、つまりよもやま」は

http://ncode.syosetu.com/n8592bo/

「つもるはなし、つまりよもやま―夏の巻―」にてご観覧できます。ご興味を持たれた方はどうぞご覧になってください。

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