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リアがリアルから聖杯城のあれこれについて教わった後、二人は居間へ戻った。リアルはリアに長椅子を勧めると、リアに軽く尋ねた。
「ちょっと休むけど、コーヒーでいい?」
リアはリアルが親切に気を使いながら色々と教えてくれたので、普段飲まない飲み物を受け入れた。
「はい、お願いします」
リアルは台所へ行き、コーヒーを淹れた。居間に気分が高揚する香りが流れた。リアルはコップを一つリアに渡すと、一口飲んだ。リアもコップを傾けた。これが聖杯城の日常の味か、とリアは思った。
「それで、次は『チェス』について話しておくわね。塔の町から借りていた西大陸の魔法本は、『チェス』のために私が使わせてもらっていたものなのよ。私は異世界で女子学生たちに『チェス』を見せているけど、その夢を文章化するために鏡の国で魔法本を出版したの。その時、西大陸の魔法本を参考にしたから、私が魔法本を持っていたのよ。今では、図書館のちょっとした七不思議に使わせて頂いているわ」
「そうですか」
リアは静かにコーヒーを口にした。去年のことを言うのは飲み込んだ。今は女子学生が本を持っていることは知っていた。それは本の新しい物語なので、リアはそれでいいと思った。本には持ち主の物語が重なっていく。持ち主が変わることは塔の町の蔵書ではよくあることだった。
リアルは聞き手が言葉を口にしなかったのをみて、話を続けた。
「私はリンが創った『チェス』を手伝っていて、まぁ、共同責任者みたいなものね。クロスで異界を繋ぐのは、私の趣味みたいなものだけど。今まで二人でやってきたことだけど、リアは遠慮しなくていいわ。何かあったら、リンに相談して。私は反対することはないわ」
『チェス』はリンとリアルの間に深い繋がりを重ねてきた。リアがその間柄を見て寂しい想いをすることはない、とリンの伴侶は言った。リアは肩をすくめた。
「ありがとう、リアル」
リアルは話を変えた。
「じゃ、ここで相談しましょう。お互い嫌なことはしないように、取り決めをしておく方がいいでしょ。またこれからも何かあったら、ちゃんと相談することにしましょう」
リアはリアルのさっぱりした提案に、安心感を覚えてにこりとした。リアルは続けた。
「まずは、私から言うわね。リンの寝台では情を交わさないこと。それから、台所の使い方は……」
リアルはさばさばと発言していった。リアはリアルの潔癖感に触れ、納得し、嫌な感じはしなかった。リアは、リアルがすらすらと自分の気持ちを伝えることができることに、頭の回転の速い人なのだ、と了解した。リアは一言応えた。
「分かりました」
「それで、リアはどう?」
リアルは心の底を測るように尋ねた。リアは目を伏せて、心の内を語った。
「僕は、リンとリアルの今まで重ねてきた日常を見るのが苦手です。リンがリアルを優先する所を見ることになるのを恐れています。だから、三人で団らんすることは今の僕には無理です」
「そうね、分かったわ。……まぁ、私も同じだけど」
リアルはさっぱりと同意した。話が終わり、リアルはコーヒーを飲み干し、コップを置いた。
「私はこんな性格だけど、宜しく、リア」
リアルは相手を思いやるような、遠慮するような、強気を隠さないような優しさでリアを見た。リアはやや眉を下げて言った。
「はい、宜しくお願いします、リアル」




