手紙の行方
昔、俺は郵便配達の仕事をしていた。
朝早くに郵便局へ行き、新聞やハガキを受け取り送り主の家まで届け、ポストに入れる。
最初はこの仕事を舐め腐り、余裕ぶっていたが、いざやってみれば余裕もクソもなく、なんで同僚の奴らは出来るんだ?という気持ちでいっぱいだ。
まず、朝早くに起きるのが憂鬱だ。
もう一度まぶたを閉ざしてしまいたいそんな気持ちに駆られながら毎朝起きている
次に、届け先が分からなくてイライラする。
住所が読みずらかったり住所自体が存在しなかったり、読めてもその家までの道が分からなかったり……
俺は大体これで怒られている。
そして、雪の朝の時はとてつもなく寒い
とにかく寒い、それだけだ
とある日のこと
朝から起き、今日も手紙を配達していた。
「ふぅ、」と近くにあった自動販売機で買ったコーヒー片手、最後に行く家へのルートを確認しながら休息をとっていた。
「最後は…〇〇町4丁目か、よし」
と呟き俺は空っぽになった缶をゴミ箱に捨て、バイクに跨り走っていった
「付いたっぽいが…」
そこは空き地でも公園でも無い
ちゃんとした家はあるのだが…
その家には無数の落書きで溢れかえっていた。
「ここ治安悪すぎだろ、てか住んでるのか?」
と家主には失礼すぎる事を思いながらポストに手紙を入れようとポストの方へ近づいてみれば
ポストの中にはパンパンに詰められており、
この手紙を入れる隙間なんてなかった。
おそらくこの家に住んでる人は誰も居ないのだろうか
ポストの中からはみ出している新聞に目をくばせば△▽△▽年8月号…昔のものだった。
ポストの近くに置くにしろ、この配達物はここの家主に届く確率は低いのだろう。
「はぁ、時間の無駄だったな」と思い引き返そうとバイクの方へ足を向け、数歩歩いた所で
ふと気になってしまった
ここの家主はどんな人だったのだろう、
この荷物の送り主は何を渡したかったのだろう
とか考えていたら
届かない可能性の方が高いし…開けちゃおうかなという非常識すぎる考えに行き着いた
「…まぁいいよな。」
と思いフラップへと手を伸ばし開けてしまった
中を見ると1枚の便箋が入っていた
便箋にはこう書かれていた
ー拝啓ー
寒中お見舞い申し上げます。
寒の入りとともに寒さが一段と厳しくなってまいりましたが、お師匠様はご健勝にお過ごしでしょうか?
お師匠様は封書のようなものを送るな。とのお言葉でしたが私にとっては5年間顔を合わせていなければお師匠様がお元気でおらっしゃるかと案じております。
お師匠様がお叱りになられると思いますが、弟子の生存確認だと思い、お許しをいただきたいです。
お師匠様の事ですから無理をしてお体を崩される日々かもしれませんが、少しは自分の体を気にかけてみてはいかがでしょうか。
またお会いできる日を楽しみにしております
敬具
令和△年✕月吉日
ー陽葵ー
「…これは、読むべきじゃなかったな。」
1度開けてしまったものを届けるのは失礼すぎる
と考えてみるとこの手紙は本人に届かないな
と後悔してしまった。
そのまま便箋の中に戻しポケットに入れ
バイクに跨った
△▽△▽△▽△
「っていうの話だよ」
「はい、お前アウトー。」
「普通手紙の中見ねぇよ、頭おかしいんじゃね?」
と目の前で酒を飲んでいる友人が言った
「だよな。俺も頭おかしいって思うわ笑」
「でも、急にどうした?お前ってあんまり昔のこと言わなかったくせに。」
「あー、それがな。最近実物を見つけたんだよ。」
とカバンの中から便箋を出し机の上に出した
「え?!おま、まだ持ってたのよ!」
と友人はその便箋を手に取り読み始めた
両者口を閉ざし、俺達は静寂に包まれた
「…まぁ、この陽葵って人とお師匠様って人が会えてたらいいよな。」
静寂を最初に破ったのは俺だった。
処女作をリメイクしたものです。
題名を考えるが大の苦手ー…




