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幕間「ギルドでの日々」

ギルドに通う日々が、いつの間にか習慣になっていた。


朝、掲示板の前に立ち。

依頼書を眺め

マーシャが条件を確認し、ジークが即断する。


『…我が、銅貨数枚のために働く日が来るとはな』


「文句言わないの。あんたの飯代も宿代も、全部ここから出てるんだから」


『……承知している』


悔しいが事実だ。



◆一件目:薬草採取依頼


――森・湿地帯


依頼内容は単純だった。

薬師ギルド指定の薬草を十株。


だが、場所が悪い。


「じめじめしてる……」


マーシャが嫌そうに顔をしかめる。


湿地に足を取られながら進むと、

赤みを帯びた薬草が群生していた。


『根を傷つけるな。再生する』


「細かいわね……」


だが、その瞬間。


――ざぷっ。

水面が揺れた。


「……何かいる?」


『下だ。来るぞ』


現れたのは沼ヒキガエルだった。

体液に軽い毒を持つ魔獣だ。


「採取だけじゃ終わらせてくれないか……!」


ジークが前に出る。


だが足場が悪い。

『待て、無理に斬るな!』


我は小さく魔力を練り、

炎の弾を撃ち出す。


思ったよりも小さい火球。


やはり、この体になってから上手く魔力が扱えない。


だがこれは沼ヒキガエルに当てるためではなくーー


『……牽制だ』


火球は沼ヒキガエルの目の前の水面に当たり、蒸気が上がる。


水しぶきにより沼ヒキガエルの視界が遮られる。


『マーシャ!氷魔法で水面を凍らせろ!』


「…!氷魔法(アイシクル)!!」


マーシャが氷属性の魔法で水面を固め、

ジークが一気に距離を詰めた。



戦闘は短時間で終わった。


『……無傷で済んだな』


「ダイオウ、指示ありがと」


『……フン』



◆二件目:街道護衛


――夜間・商人護送


依頼は護衛。

報酬はやや良いが、夜間。


「最近、夜が怖くてね……」


商人は何度も振り返る。


『……来る』


「え、もう?」


月明かりの下、

現れたのはシャドウウルフが三体。


その姿は影に溶け込み、音なく迫る。


「速い!」


『落ち着け。あれは光を嫌う』


マーシャが即座に理解する。


発光魔法(ルミナス)!」


光弾が放たれ、


一体の輪郭がはっきりした。

だが、残りは散開する。


『……主がいる』


その時、

一段濃い闇が動いた。


『あれだ!』


ジークが飛び出す。

だが――


「チッ、すり抜けられた!」


シャドウウルフは深追いせず、退いた。


『……撤退判断が早い。知能が高いのだろう』


「倒さなくてよかったの?」


『今回の依頼は護衛であろう。追えば被害が出る』


商人は震えながらも感謝した。


「助かった……本当に」



◆三件目:ゴブリン討伐


――廃小屋付近


居座っているゴブリンは五体。


数は多くない。


『……問題ない』


我は慎重に魔力を練る。

以前の失敗を思い出しながら。


『……小さく、正確に』


放った火球は一体の足元を焼いた。


「今だ!」


ジークが斬り伏せる。


だが――


『……ッ』


二発目で、魔力の流れが乱れる。


『しまっ……』


火球は暴発し、

地面を焦がしただけで消えた。


「ダイオウ!?」


『……制御が、まだ甘い』


マーシャが前に出る。


「だったら、あんたは“見る役”」


『……見る役?』


「そう。観察!」


我は必死に視線を走らせる。


『……!…左の個体だけ戦闘を避けているようだ…恐らく指揮役だろう!』


マーシャの魔法がそこを撃ち抜く。


どうやら本当に指揮役だったようで、残りのゴブリンたちは連携が全く取れなくなっていた。


その隙を見逃さず、ジークとマーシャが一気に片付けた。



『……すまん』


「…別に。謝るようなことじゃないわ」


「むしろ助かった」


『……フン』


胸の奥が、少しだけ温かい。




ギルドに報告している途中。


『……まただ』


――くく……。


以前は2階から感じた視線ーー


今回は違い、どこからかの視線がが全くわからない。


「どうしたの?」


『……いや』


だが、確かに。

誰かが、我らを“見ていた”のだ。

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