ドラゴンの巣
ゴブリンの群れは冒険者一人二人の犠牲で何とか追い払うことが出来た。
カイトがチャモロとゴブリン襲撃について話していると、荷馬車からエヴァがあくびをしながら出てきた。
カイトは呆れた顔でエヴァに言う。
「レベル・・・魔力を取り戻すんじゃなかったの?」
「ゴブリンなんて何匹狩っても同じよ。それに、あなたから直接くれるのが一番早いのよ?」
「エヴァ・・・カイトは同じパーティなんだよ?それくらい我慢しなよ」
「そう」
二人は何を言っているんだろう・・・?
会話の意味は分からなかったが、とりあえず頷いておいた。
荷馬車の修理が終わると森を抜け、荒野を進んでいく。幸い厄介なモンスターはドラゴンの気配に気づいたのか皆ナリを潜んでいる。
移動の間、冒険者ギルドから派遣されている責任者が作戦を説明を始めた。
「今回の作戦はこのバリスタが要だ。幸いそれほど大きなドラゴンではない、比較的小さくて若いドラゴンのようだ」
「冒険者総出で足止めして急所にバリスタを打ち込む。これが今回の作戦になる」以上だ。と話しを終えるころには所定のポイントでバリスタの組み立ての準備を始める。
このバリスタは最新型。
従来より軽く、そして現地で組み立てが可能である。
簡易キャンプを張り、ドラゴンを待ち受ける。今回の作戦は困難を極めるだろう。・・・とおもっていた・・・。
「わっ!すっごく強そう!」
「えっ?」
急に知らない冒険者に話しかけられカイトは驚いて聞き返す。
「すまない・・・そいつはスラ子、俺のパーティだ。お前が気になっていたようでな」
「もしかして、コバヤシさん・・・ですか?」
「そうだ」と答える。
どうやら不思議な気配がカイトからしたようで、スラ子・・・という冒険者から声をかけたいと言っていたらしい。
「普通の冒険者より魔力量が多いな・・・神からチートでも貰ったか?」
「はい。コバヤシさんは何か持っていますか?」
コバヤシは「聞いているだろうけど」と言うと、チートは希少なモノであり持っていないのが普通だと言う。
「つまり、持っていない。という事だ」
「えーと・・・なんかすいません・・・」
「気にするな」
そう言い残すと二人は離れていった。
偵察にいくつかのパーティが行くことになっていた。
火山は非常に危険だ。その土地柄、強力な魔物が多く火の精霊も目撃された事もある。
だからこそ偵察にいくパーティは慎重に選ばれた。
その中にはコバヤシさんもいたが何故か俺たちのパーティも選ばれる。
コバヤシさんがどうやら進めたようで、「光栄だよ」とチャモロさんも嬉しそうにしていた。