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サキュバス

その次の日の朝、宿屋にいた俺はいつも通りパーティーの荷物を準備していた。

これを出かけるまでにやっておかないと、どやされる。

「ふうー!寒い・・・!」

準備が終わったころだった。

「おい!カイト!俺たちの荷物は準備してあるだろうな?」

「はい・・・」

どやされたが罵倒されるよりマシだ。

俺も腰に冒険者グッズを着ける。

そうして準備が済むとパーティーは冒険者ギルドにむかった。







いつも通り掲示板を見ると見慣れない依頼があった。

たまたま目に入ったその仕事は、金貨2袋・・・普通の2倍以上の報酬だ。

討伐対象は・・・!

「サキュバス?ホントにそんな魔物いるのかよ」

タレスは馬鹿にするように言った。

女神イシュタルも言っていたけどサキュバス、という魔物はあまり一般的ではないらしくその存在はかなり曖昧になっているらしい。

じつはパーティーをタレス達と組む時、サキュバス特攻のチートについて言ったのだが信じてもらえなかった。そのおかげで俺はお荷物だと馬鹿にされるのだ。

「お前もそんなこと言ってたが・・・妄想もここまで来ると滑稽だな」

「くっ・・・!」

言葉に詰まる。確かに俺は役に立ってないかもしれないがそこまで言われる筋合いがあるのだろうか。

そして依頼を今回は受けることにした。なにしろ破格の報酬だ。

「この依頼、受けようぜ。いざとなったらカイトがサキュバス特攻があるんだろ?」

馬鹿にするような顔。

エレナもなじるようにはなで笑った。

サイヘルはこちらを見向きもしない。

カイトは全員分の荷物を背負うとタレスについて行った。







「依頼の遺跡はここか」

「そうみたいね」

「サイヘル!マッピングはやっとけよ?迷ったら魔獣に食わせてやる」

「はい・・・」

この世界にきて初めての遺跡調査だった。

遺跡はこの国の周囲には結構な数、存在していてタレスは報酬がいい遺跡調査をよく受けているらしい。

だけど俺は今回が初めてだ。正直、緊張する。

依頼は実はもう一つあった。

行方不明者の探索。

上級パーティが全員失踪したのだ。

見つけられたら追加報酬もある。

「灯せ」

エレナは杖で道を照らす。

タレスは冒険慣れしているだけあってずんずん進んでいく。

そうして10分ほど進んでいっただろうか。

色香というか・・・不思議なにおいがする。

「なんだ?女ものの香水か・・・?」

「いや、何か変ね。魅了の魔術の気配があるわ。まさか、ね」

その先の暗闇を照らす。

そこには精気を失ったような死体が2人、転がっていた。

「おい。これ・・・なんだよ」

「私にもわからないわ・・・でも奥に行くのは危険ね」

おそらくこの死体が行方不明者だろう。

「あら?逃げるのかしら?」

暗闇から悪魔の声がした。姿を現すとそれは下着を纏った美少女・・・なのだが、言い知れぬ恐怖をこの少女からは感じる。

いくらタレスでもわかる。この少女に関わるとその死体のように干物になるだろう。言い知れぬ感覚に体が震える。

「大丈夫よ。気持ちよくなるだけだから・・・」と少女が笑うと赤い瞳孔が開いた。

恐怖が限界になったタレスはカイトを突き飛ばす。

「おい!カイト!そいつがサキュバスなら、分かってるな?任せたぞ!」

「ちょっ!勝てるわけないよ・・・!置いてくの!?」

カイトはタレスに突き飛ばされた。起き上がろうとしたが全員の荷物が邪魔でうまく動けない。

一目散にパーティは逃げていく。

「かわいそうな子ね。楽にしてあげるわ」

仕方ない、と荷物を外して白い剣を構える。

「そもそもサキュバス特攻ってなんだ!でも・・・やるしかない!」








そこからは一方的な戦いだった。

そもそも攻撃が当たらない。

ふわりふわりと風をまとって低空浮遊しながら避ける。

「その剣、さすがに食らったら痛いわね。どう?それを手放したら気持ちよくさせてあげるわよ?」

「死ぬのはごめんだ!」

その瞬間。

「うん!もし君が動けるなら協力する!」

奥から声がしたので見るとふらふらとした足取りで誰か出てきた。

「僕はチャモロ。まだ魔力は残ってる。大分その子に吸われちゃったから援護くらいしか出来ないけど・・・君は多分、救助に来た冒険者だよね?」





「一応・・・荷物持ちしかしたことないけど・・・」

初の魔物との殺し合いだ・・・不安げにカイトはサキュバスに剣を向けた。




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