神にあだなすもの、ヘカトンケイル
最近のギルドはどこか騒がしい。
ギルガメッシュ王は魔素が濃くなると魔物が活発になると言っていたがそのせいだろう。
しかし、俺たちのパーティはギルドの依頼ではなくギルガメッシュ王からの特殊な依頼を受けていた。
それは魔素の強い魔物を追跡し、倒す事。
そして今回は、その関係でコトミネさんに呼び出されていた。
かなり久しぶりだ。
教会に来たのはいつぶりだろうか。
「カイト、成長したな」
「ありがとうございます」
軽く挨拶をした後、「では」と早速本題に入った。
教会から招集があるなんて珍しい。
「最近魔素の強い魔物が多く見受けられているのは知っているな?それに関係する話だ」
「はい」
「君が最近倒したオーガ、という魔物は邪神ヘカトンケイルの部下なのだ。古い書物位にしか情報はないが最近の魔物の活発化を考えるとこの世界に来ていてもおかしくない」
余程やばい相手なのだろう、コトミネさんはいつも以上に険しそうだった。
ヘカトンケイルは外なる神に分別されるらしく、秩序を保つ神とは相反する存在なのだと。
「そんなに危険な存在なんですか?」
「ああ、流石に我々教会も動かざるを得ない・・・まずい状況だ。相手は邪神、一筋縄ではいくまい、しかしだ」
「我々に伝わる神の予言には、異世界転生者の話がある」
コトミネさん曰く、伝説の邪神ヘカトンケイルが異世界転生者によって倒されるという予言が昔からの書物に記されていたらしい。
フラガラッハを持つ伝説の勇者。
「君はその剣を手に入れる時、何かを感じなかったか?」
「まるで、手に吸い付くように引き抜けました・・・あっさり引き抜いたような・・・」
「そうか、もしかしたら君は伝承の勇者なのかもしれないな」
一通り話し終えると「こちらへ」とコトミネさんに案内される。
そこは教会の地下室だった。
初めてここに来た時には来たことがない場所だ。
「君は精霊について知っているか?」
「精霊・・・ですか?」
シルフとかノームとか・・・自然現象が形をとったものだろうか。
ゲームの知識だがそのくらいしかわからない。
「少しですが・・・知ってます」
「そうか・・・。カイト君、君には精霊と契約をしてもらう」
「そんなに簡単にいけるものなんですか?」
「ああ。すぐにわかる」
地下の隠し階段はここで終わりのようだ。
ギイッと年季の入った扉を開ける。
「よお。てめえがカイトか?」
「はい」
「思ったより素直じゃねえか」
地下室にたどり着くや否や銀髪の少年が話しかけてきた。
見た目は12歳くらいだろうか。
他にもメンバーは居るらしいがいまは不在らしい。
・・・なんのメンバーかは教えてくれなかったが。
1つ教えてくれたのは神にあだなすものに救済を与えるのが仕事だと教えてくれた。
「俺はロレンツィオだ。それとこれだろ?コトミネ」
そういうとテーブルに地図を広げる。
この世界の世界地図、だろうか。
「感謝する。これが報酬だ」
金貨をロレンツィオに渡すと、コトミネさんはこちらを見る。
「カイト、この地図には精霊の分布する場所が載っている。この場所に赴き、力を精霊に認めさせろ」
「4精霊・・・ですか?」
「ああ。君にとって大きくプラスになるだろう。それに、相手はヘカトンケイル・・・事は万全にきさねばならない」
カイトは地図を受け取ると宿に向かう。
正直この地図の代金を代わりに払ってもらったのは申し訳なかったが。