勇者
カイトのパーティは報告の為、帰路についていた。
幸い、帰りはモンスターの襲撃もなく比較的安全にギルガメッシュ王の納める国にたどり着く。
さすがにオーガ戦ではエヴァも消耗したらしく真っ先に宿に帰って休むと言っていた。
「今回は大変だったねカイト君」
「うん、そうですね・・・」
しかし、正直カイトはそれどころではなかった。
この聖剣フラガラッハをギルドに渡さなければいけなかったから。
それを見透かしたようにチャモロはカイトに言う。
「もしかしたらギルガメッシュ王が功績として認めてくれれば褒賞の品として貰えるかもね。もちろん、難しいとおもうけど・・・」
「そうだといいですけど・・・まあ、新しい剣買いに行ってきます」
足が重い。
「一緒に行こうか?」とチャモロさんは言ってくれたが気を遣わせるのも悪かったので一人で行くことにした。
ギルドに着くといつもより少し重く感じる扉を開ける。
・・・?
いつもよりギルドが騒がしい。
「カイト様!」
受付嬢が何やら焦って声をかけてくる。
この剣の事だろう。
「聖剣が見つかったと報告があったので・・・!」
「聖剣・・・これの事です」
鮮やかな緑の剣が光沢を放つ。
チャモロさんが報告したのだろうか。
冒険者たちは初めて聖剣を見るらしく、「おお・・・!」とざわめく。
「ギルガメッシュ王に報告に行ってください。それと、何か褒賞を貰えるかもしれませんね」
「わかりました」
「カイト君、周りの反応はどうだった?」
ギルドを出ると、やけにニコニコしたチャモロさんが待っていた。
「みんな、すごい反応だったね。少しは君もドやってもいいんだよ」
「褒賞なんていらないからこの剣が欲しい・・・」
すると、「作戦があるんだ。ギルガメッシュ王から聖剣を手に入れる作戦がね・・・!」と言った。
さっき騒がしくしたのも何やらチャモロさんの作戦らしい。
そもそも聖剣の所持者と認められるということは勇者になるという事。
勇者において、与えられるギルドの階級は白金等級。
勇者にその階級を与えられるということは権力者にとってはすごく名誉になるのだ、と。
要するにギルガメッシュ王の名誉欲を満たそう、という作戦らしい。
ギルガメッシュ王ってそんなに単純にいくものだろうか。
「とにかく行こうか、カイト君」
「はい!」
「依頼の達成、見事である」
「はい!ギルガメッシュ王!」
早速、ギルガメッシュ王に何があったかを報告する。
遺跡の最奥にいたオーガと言う強力な魔物の事、そして・・・!
「ヘカトンケイル・・・!そしてオーガが最後に呟いた異世界転生・・・!ふむ・・・」
ギルガメッシュ王は傍らにいた司書に文面を書かせる。
一通りカイト達の報告をまとめ終わると、
「カイトよ、もしこの異世界転生がお前の事ならば・・・」
と続ける。
「その剣をひと時、お前に預ける。借りものだが、カイト・・・お前を勇者に任命する」
カイトは緊張した面持ちで「はい!」と頭を下げた。