聖剣
3人は満身創痍で地下に降りていく。
幸い暗闇から襲ってくるブロブなどもいなかった。
チャモロさんの杖の先の光だけが頼りだ。
そんな時、チャモロさんが呟く。
「二人とも、僕が前回来たときはここまで奥には入っていなかった。だから、気を付けて。・・・あともしかしたら奥に聖剣があるかもしれないんだ。あの魔物が意味もなくここにいるとは限らない、期待は出来るかもね」
「聖剣・・・ですか?」
「うん。伝説の剣・・・フラガラッハ、風を切り裂くと言われている剣だよ。もうそれにかけるしかない」
「もしあったら結構な骨董品じゃない。さび付いてそうね」
(聖剣なんてかっこいいな・・・!)
「ヘカトンケイル様。申し訳ありません」
誰に言うでもなくオーガはそれを口にする。
預かっていた魔獣もすべて全滅させられてしまった。
さっきは予想外のダメージを受けてしまい、回復に時間をかける必要があった。
しかし、オーガは彼らに聖剣を奪われる前に追いつかなければならない。
「しかたあるまい」
まだ眼は片方しか見えないがこれ以上の回復は時間的に難しいだろう。
動くだけであれば支障はない。
どちらにせよ奴らは逃げることは出来ない、なぜならこちら側が出口だ。
「これは・・・」
パーティメンバーは思わず息をのんだ。
遺跡の最奥は空気がすごく澄んでいて、天井に空いた穴から幻想的な光が差し込んでいる。
そして光に照らされた祭壇には深い緑色の刀身が刺さっていた。
しっかりと刺さっているその剣は作られて間もないような感じがするほど綺麗だった。
・・・!
カイトは何気なくその剣に向かって歩いていく。
「これは・・・!」
それは手に吸い込まれるように呆気なく引き抜くことが出来た。
それはまさしく聖剣と言えるような輝きを放っている。
「それ・・・すごいね・・・!まるで神代の武器みたいだ!」
封印された剣は年月をまったく感じさせない。
武器を失ってしまったし、代わりに手に入れたいけれど・・・。
こういうモノを手に入れた時はしっかりとギルドに報告しなければならない。
でも「いまだけはいいよね」と折れてしまった剣のホルダーに差し込む。
なんだか、勇者になった気分だ。
「カイト君、来るよ」
「私はもう無理よ。魔力も空っぽだし」
奥から再び巨体が姿を現す。
「貴様・・・よくもやってくれたな。あとその剣はこちらで預からせてもらおう」
「死ぬわけにはいかない・・・!行くぞ!」