エヴァの援護
戦力差は圧倒的だった。
エヴァがオーガと拮抗している間、必死に魔獣の数を減らしていく。
この状況で誰かが1人でもパーティが欠ければ助からない。
幸いなのは魔獣が比較的弱い部類だったことだ。
魔獣コアトル・・・毒性の爪を持つ魔物。
「ホーリーライト!」
チャモロさんはスネアや搦め手の魔術を行使し、隙を作る。
「ハアアア!」
少しでも有利な状況で戦うためにカイトもチャモロも必死だった。
オーガとエヴァはお互い本気だった。
人間には到底見られない壮絶な魔術の打ち合い。クイーンサキュバスは元々高度な魔術を簡単に行使出来る。しかし、
(拮抗は出来ているけど、まずいわね)
「どうした?威勢だけは良かったが・・・その程度か」
少しずつ押されていたのは事実だった。
「筋肉の塊にしては意外ね。なにより私より魔術で上回る相手なんて初めて見たわ」
エヴァは先ほどからファイヤー、サンダーなどのスタンダードな威力の出しやすい魔術を使っているが、対するオーガは珍しく土属性の魔術で壁を作ったりするだけでなく本気を出したエヴァ以上の属性魔術を放ってくる。
(レベルダウンの影響が深刻になっているわね・・・)
絶体絶命。
その言葉が一番しっくりくる。
魔獣はなんとか倒せても、このオーガと言う魔物、強すぎる。
カイトとチャモロは魔獣を倒し切った時、エヴァは満身創痍だった。
「やっと終わったみたいね。もう私、限界よ。これを受け取りなさい」
カイトの手を取ると、
「風の力を与えよ・・・!シルフ・・・!」
残りの魔力でカイトに強いバフをかける。
カイトは体が軽くなるのがわかった。
「援護してくれるなんて珍しいね。エヴァ」
「ここであの筋肉ダルマに犯されるよりマシよ」
皮肉っぽくエヴァは言った。
カイトは思わず笑ってしまう。
「それはそうだよね!信じてくれて・・・ありがとう」
「僕も出来る限りの援護はする。カイト君、任せたよ!」
「分かった!」
「貴様・・・その程度で俺に勝てると?まだあのサキュバスのほうが楽しめたが・・・!」
オーガは崩れた岩の塊を軽々と掴み、放ってきた。しかし、カイトはその攻撃を強化された身体能力で避ける。こんなにエヴァは早く動けるのか・・・!
「すごい・・・!」
「ふん・・・!その程度で・・・!」
カイトは攻撃をたやすく避けると勢いよく跳躍しオーガとの距離を詰める。
「いけえええ!」
カイトはそのままの勢いでオーガの眼に剣を突き立てた。
苦悶し、暴れるが、オーガに剣を刺したまま剣先から魔術を行使する。炎の魔術で硬い表皮で守られていたが、内部から大きなダメージを与えた。
「燃えよ!!」
「貴様・・・!」
オーガは刺さった剣を掴み、カイトを振り払う。
「やばっ・・・!」
これに掴まれたら絶対に逃げられない・・・!剣から手を離すとカイトはオーガとの距離を取った。
「グウウウウ!」
剣を引き抜き、へし折る。
「逃げろ・・・!」
「まったく・・・!」
3人は遺跡の奥まで走る。エヴァは動けそうにないので肩を貸して走った。
(油断した・・・!)
幸いオーガのダメージは大きい。遺跡の奥に逃げる時間は少しはある。
_______剣を失ってしまった。出口はオーガがいる方向だけだ。
事態はさいやくだった。