行方不明の子供
外が騒がしい。
カイトが騒ぎで起きると、
「私の息子が見当たらないんです!どうか探していただけませんか!?」
「あーそうね」エヴァはめんどくさそうに対応していた。
それを見てカイトは宿屋のおかみさんに声をかける。
「どうしたんですか?魔物にさらわれたとかですか・・・!?」
「今日の朝、村の近くの森に、村の子供数人で遊びに行ったのですが何かあったみたいで・・・」
パニックで何を言っているのかはわからないが一刻も早く探しに行ったほうがいいかもしれない。
チャモロさんはもう探しに行っているようだ。
「エヴァ、行こうよ」
「しょうがないわね。お酒、あとでおごってもらうわよ?」
行方不明者になった場所は木漏れ日が差し込むような、さわやかな森だった。
・・・こんな場所で迷うだろうか。
「お、カイト君。エヴァも来たんだね」
「こんなところで子供、見失うかな?」
「僕もここに来た時そう思ったけど・・・」
チャモロさんは何かを見つけたようだった。
「ほら、これ」と食べかけの果実が転がっていた。
形跡的にカリュドーンかもしれない。
もしそうなら大変だ。
「群れでいることはなさそうだけど、ここからはパーティで探そう。カイト君やエヴァならともかく僕はいまレベルが低いから数で襲われるとまずいし」
「わかりました」
パーティで合流した後、森の沢を下って行く。
川沿いに下って行けば何か見つかるかもしれないからだ。
そして途中に明らかな痕跡があった。
靴の跡と獣の足跡。
そして、
「たすけてください!」
目の前の木の上から声が聞こえた。
木下には1メートルと30センチのカリュドーンが2匹。
あの大きさはかなりの獲物だ。
「あれは・・・強敵だね。僕のレベルがなくなる前と同等だよ」
カイトは剣を構えると、
「あの子供を助けなきゃ!」
覚悟を決める。ここで助けないなんて選択肢はなかったから。
「燃えよ!ファイヤーボール!」
限界まで魔力を練り、剣先から炎の塊を放つ。
この剣は刀身は白いが魔剣に近い性質を持っている。
だから杖の代替が出来る、とコトミネさんが言っていた。
_____これが当たれば追い払うことぐらいは出来るかもしれない。
「ブギイイイ!」
炎が直撃したが、怯ませるのが精いっぱいのようだった。
カリュドーンの1匹がこちらを見据える。
「カイト君!支援は任せて!」
チャモロさんは「ウル!」と詠唱するとカイトの体が軽くなった。
これなら避けられる・・・!
カリュドーンの直線的な突進を簡単に避けることが出来た。
そして避けた後すぐに距離を詰め、剣を振り下ろす。
後ろからの攻撃だったので致命傷にはならなかったが、それでも十分だった。
パニックになったカリュドーンは逃げ出していく。
「あと1匹!」
「カイト君!さっきの魔術で身体能力がかなり上がったはずだよ!」
「この魔物は経験値、高そうね。手伝ってあげる」
エヴァは見たこともない魔方陣を展開し、詠唱する。
「万能なるマナよ・・・雷を発現せよ・・・!サンダー!!」
雷が轟音とともに直進する。
獣は一瞬で感電し、即死した。
・・・!?
「エヴァ・・・普段からそのくらいやってよ・・・」
「魔力は無駄にしたくないのよ」
「ありがとうございます!冒険者様!」
怖がる子供を木から降ろすと村に送り届けた。
ちょっと怖かったけど、助けることが出来てよかった。
お礼にと、少し多めに食料を分けてくれた。
正直、助かる。
今回驚いたのは・・・エヴァの強さだった。
「しつこいかもしれないけど、たまには援護くらいしてくれないかな・・・」
「魔力を返してくれたらいいわよ」
「勘弁して・・・」とカイトはため息をついた。