長旅
目的地は一週間ほどで着くようだ。整備された道を通っていくとなると、多少回り道になるのでそのくらいかかるそうだ。
その間は交代で眠り、モンスターに不意打ちされないように警戒する。
そして、何かを見つけたらすぐに報告するように馬主に伝える。
長距離移動において、馬車に何かがあったら大変だ。
「エヴァ、食べ過ぎないでよ?必要な分しか食料持ってきてないんだから」
「そこまで馬鹿じゃないわ、でも少しぐらいはいいんじゃない?」
カイトはため息をつくとエヴァをたしなめるのをあきらめる。
「そういえばカイト君に聞きたいことがあるんだ」
チャモロさんは唐突に、
「君、異世界転生者かな?」
そう質問する。
カイトはびっくりして「はい」と答えた。
そんなことを聞かれたのは初めてだ。
「やっぱりか、変わったチートを持っているみたいだし。なによりチートを持っている事自体珍しいからね」
そんな会話をしていると、おどろいて馬主さんが話しかけてくる。
「それはすごいですね。転生するには神の加護が必要ですから」
「確か、俺で2人目の異世界転生者だと聞きました。確かに珍しいですね」
会話に花がさく、こういう長旅は初めてだったので楽しい。タレスの時とはまるで違った。
本当にチャモロさんはいい人だと思う。
・・・一応、エヴァも。
「一旦、この村で休憩しましょう」
馬主さんがそういってカイトとエヴァを起こす。
行路上にある村を中継地点にするようだ。
「うーん!」
カイトは疲れた足を伸ばし思い切り背伸びする。
チャモロさんは一足先に馬車を下りていたようだ。
この村に寄って行くのは休憩と食料の確保だ。
携帯食料は長期間保存はできるがさすがに1週間くらいで傷んでしまう。
だから金貨で食料を交換する必要があった。
こういう主要国から遠い場所にある村などは、金貨は貴重なので、ある程度の金貨があれば交換を断られることは少ない。
「カイト君、こっちは大丈夫そうだよ」
「色々とありがとう」
「いいんだよ。たまには先輩らしいこともしないとね」
「気持ちいい・・・」
丁度宿があったので部屋を借りることになった。
ベットで眠れるのは数日ぶりか、柔らかいベットに体を預ける。
休めるのは1日だけだ。なるべく体を休めないといけない、カイトはすぐに意識を手放した。
・・・が。
「いま、チャンスよね?チャモロの眼もないし」
気づいたらエヴァが目の前にいた。
「うわああああ!」
ドーン!と突き飛ばす。
「残念ね。まあ、」
「油断はしないことね」とエヴァは自室に帰っていく。
なんでこんなやつパーティに入れたんだろう、とちょっと後悔したのであった。