決勝
「コバヤシ様の勝利です!」
決勝戦に通った相手はコバヤシさんだった。
彼は本業は魔術師らしいのだが、剣の技量もそれなりにある、と言っていた。
だからよく魔剣士と誤解されると聞いた。
でも本業でなくても腕前はお墨付きだ。
ここまで苦労なく予選、準決勝と上がってきているのだから。
「どこまで通じるかわからないけど・・・やるしかない!」
水が入ったコップを一気に口に含む。
自分の名前を呼ばれるまで息を深く吸い込んだ。
「両者!入場をお願いします!」
強い光に照らされ、観客の歓声の中、舞台にカイトは足を踏み出す。
そこには紛れもない強者が待っている。
相手は油断することなくこちらを見ている。
コバヤシはこちらに剣を向ける。
「いい顔だ。やりがいがあるな」
「よろしくお願いします」
「始め!」
審判が声を上げる。
先手を取ったのはコバヤシだった。
「まずは様子見といこうか、殺す気で来ても構わないぞ」
カイトはコバヤシを待ち受ける。
剣が交錯する。
お互いに本気で剣を打ち合った。
一撃一撃に殺気を感じる。
コバヤシのこれまでの試合を、カイトは一応見ていたのだが、これまでの試合と違って本気で攻めてきているのがわかる。
「レベルは・・・お前のほうが上なようだな」
「・・・!?」
正直驚いた。コバヤシさんのほうがうわてに見えたからだ。
コバヤシは続ける。
「ただ、お前にどんなチートがあろうと技術で上回っていれば勝機はある」
「そもそもが俺は魔術師である以上、一般的な剣士に毛が生えた程度でしかない。ただ、」
話をしている最中でも剣の打ち合いは続いている。
______強さと言うのはレベルだけではなく。意思の強さだ。
そうコバヤシさんは俺に教えてくれた。
「・・・!」
話が終わり、気づいた頃には剣は弾かれカイトは喉元に剣を向けられていた。
「今回は俺の勝ちだ。また試合が出来るといいな」