準決勝
活気に満ちた観客の声は大会が進むほど大きく聞こえる。
緊張感が抜け切れていないからだろうか。
なんとかカイトは予選を通ったが体がこわばっている感じがなくならない。
待合室で前のめりに座り込み、静かに息を整える。
そんな時、
「カイト、まだ緊張が抜けないようだな。俺もだが」
コバヤシさんが声をかけてきた。
「はい」
「この大会に出るのも俺は初めてだ。・・・健闘を祈っているぞカイト」
優しいな、と思う。
次の対戦はタレスだ。
負けるわけにはいかない。
「ありがとう!コバヤシさん!」
「タレス様、カイト様!会場へどうぞ!」
ついにこの時がきた。
今こそ宿敵に勝つ時だ。
ふう・・・。と息を整え会場に向かう。
「絶対に・・・勝つ」
自分に言い聞かせるようにそういうと観客の前に姿を現す。
先に立っていたタレスはさも雑魚を相手にするような顔でカイトを待ち受けていた。
「運だけはいいみたいだな。カイト」
「ああ・・・!」
カイトは剣を構える。
「お前が昇級したのも、あのパーティの二人がいたおかげだろ?運だけはいいからな」
「お前には負けない!俺だって強くなったんだから!」
剣を持ち一気に駆ける。
これまでの冒険者は思ったよりレベルが高くなかったのか、剣を折ったり、弾き飛ばしたりしてすぐに勝負は終わっていた。
ただし、このタレスと言う男、口が大きいだけあり。
「はっ!確かにお前は強くなったみたいだけどよ。俺は上級だぜ?」
これまでの相手と違い、技量が圧倒的に上だった。
攻撃が上手くやり過ごされる。
ただ・・・!
こちらの攻撃は受け流され当たらなかったとしても。
1つだけ狙えそうな勝機があった。
「うおおお!」
「・・・?ヤケクソか・・・?」
タレスはその狙いに気づかない。
「これしか・・・ない!」
それはタレスが傲慢なゆえに犯した失敗。
剣に亀裂が入っていたことにタレスは気づいた。
「なっ・・・!」
同じ角度から剣を振り、同じ場所で剣を受け流させる。
耐久値はすり減り、亀裂がはいる。
タレスが気づいたときは手遅れだった。
「俺の・・・!勝ちだっ・・・!」
剣は真ん中から折れる。
「これが・・・狙いか・・・!?」
喉元に剣を向けた。それは圧倒的な勝利。
悔しそうにタレスはカイトをにらむ。
「カイト様の勝利です!」
「やった・・・!」
大歓声がカイトを鼓舞する。
すごい充実感だった。