予選
「あちらへどうぞ」
受付から案内され、待合室のような場所に着いた。
屈強な冒険者が、沢山見受けられる。
ちょっと自分がいるのが場違いな感じもするのも事実だった。
ただ、参加するとタンカを切った以上・・・帰るわけにはいかない。
外からは試合を見に来た群衆が声を上げているのが聞こえる。
「お前!」
「ん?」
突然に緊張を落ち着かせていると声をかけられる。
声がしたほうへ向くと、そこには参加者だろうか・・・如何にも自信がありそうな冒険者がいた。
「俺はサエル、次のお前の対戦相手だ。まあ、お前では勝てないだろうけどな・・・!」
その冒険者は中級クラスで、俺と同じ位。
・・・こういう人はタレスにそっくりで嫌いだ。
でも、
「負けないぞ!」
そう言い返す。
もう荷物持ちだけの冒険者ではない。それなりに成長したつもりだ。
「カイト様、サエル様!会場へどうぞ!」
呼びかけられ、観客の前へ緊張した面持ちで進む。
____どうせ出場するんだ。勝って見せる!
「始め!」
審判が声を上げる。
この試合では魔術の使用は禁止されている。
身体強化も、もちろんだめだ。
武器の持ち込みも許されていない。お互いに試合中使用できるのは、鉄製の一般的な剣。
なるべく同じ条件でいるようにするため、この2つの制約の元、戦うことになっている。
初めに仕掛けたのはサエル、と名乗った冒険者だった。
「・・・!」
カイトは攻撃を待ち受ける。
が。
「?」
太刀筋が見える・・・!
というか。
「遅い・・・!?加減してるのか?」
「何を・・・!」
カイトはサエルの剣戟をたやすく避けられた。
それはあの時、魔獣を1撃で倒した時と同じ感覚。
レベルが上がったおかげなのかもしれない、と考察する。
「舐めるな・・・!」
そして、それからすぐケリはついた。
たやすくカイトはサエルの剣を受け止め、膂力だけで弾き飛ばした。
剣をサエルの喉元に向ける。
「勝者!カイト!」
「くそ・・・!」
初戦は思ったよりすぐ終わった。
もしかしたらもしかするかもしれない・・・!
カイトの1試合目は思ったよりあっけなく終わったのであった。