転生
「危ない!」
覚えているのはそう叫んで信号機で子供を突き飛ばした所までだった。
気づいたら前に絶世の美女・・・。ここは?
「あなたは転生しました。最後の光景を覚えていますか?」
「たしか・・・子供が轢かれそうになって・・・」
目の前の女性は柔らかな笑みを浮かべると、
「そうです。勇気がある方ですね」
そう言った。
真正面から言われると正直、恥ずかしい。
「さて、早速ですがあなたには転生していただきます。現代からの転生はこれで2人目になりますね」
「はあ」
2人目・・・最初の転生者はどんな人なんだろう。
「とりあえずしばらくはこの神の社で訓練をしていってください。いきなりフィールドに放り込んだら危険なので」
それからは驚くことの連続だった。
神の社と言われるだけあり、ごく普通に空を飛んでいたり・・・いわゆる魔術と言われるものが日常で使われている。
俺には部屋が与えられ、文字の勉強をしたり魔術の訓練をしたりした。
「燃えよ!」
俺が最初に習得したのは炎の魔術だった。
属性と言われるものは種類があり、俺はその中でも炎が一番得意らしい。
「うおっ!」・・・っと初めて炎が出たときは思わず声を出してしまった。
「すごいですね。あなたには才能があるようです」
「最初の転生者はどうだったんですか?」
「うーん・・・才能は・・・今はそれなりですが来たばかりの頃は平凡でしたね。他にも聞きたいことはありますか?」
「うーん」と悩んだ後、
「いわゆるチート、とかってありますか?」
一番それが気になっていたので聞いてみた。
「あることもありますが、ほとんどはないですね。一応あなたのチート、見てみますか?」
「お願いします」
「それでは」とそういった特殊なものがあるのかチェック出来る部屋に案内される。
あまり期待はしていなかったが、少しは憧れたっていいよな。と女神イシュタルについていく。
歩いていく最中、色々な神や、天使達に声をかけられるところを見ると位が相当高い神なのだろう。
「あまりキョロキョロすると冷やかされますよ」
「あ・・・すいません」
くぎを刺さされた。
・・・恥ずかしいな。でもこんな所にいたらキョロキョロするのは多少許してほしい。
白い大扉を開ける。
そこには大きなアメジストのような鉱石が浮いていた。
それは回転するたびに言い知れぬ光を放っている。
「手をかざしてください」
「・・・はい」
・・・。
・・・・!
「鑑定・・・サキュバス特攻」
アナウンスが流れると、周りの天使がざわつく。
「サキュバス特攻・・・!?」
「すごいレアだぞ・・・!?」
・・・サキュバスって・・・あれかな。
男を堕落させる種族・・・かな?
なぜこんなにざわついているのだろう。
「カイト、あなたはとても希少なスキルがあるようです」
「ここでの鍛錬は終わりです。私を崇拝する教会組織に転送します。そこからはあなた自身の力でこの世界を経験してください」
その言葉の後、光に包まれ・・・。
見慣れない街に降り立った。
ここから俺の旅は始まる。