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最終話 2/3

土曜の朝、私は隆平との待ち合わせ場所へ向かうため予約していた新幹線に乗った。帰りは16時55分発の切符を買っている。

待ち合わせ場所は長野の永野駅。新幹線から降りて西口側のロータリーだ。

隆平が先にレンタカーを借りて迎えに来てくれる。遅れがなければ11時頃に到着する。

恭也さんのお店に行った後どうするのかはまだ決めていない。隆平は行きたい所がいくつかあると言っていて、帰りの列車の時間まではそれに付き合う予定だ。

駅の階段を降りてロータリーに着いた。どの車なのか聞くため隆平に電話をかけた。コール音が暫く鳴って隆平が出た。

「もしもし、駅着いたよ」

『おう。無事ついてよかった』

「どの車?私、白のワンピースにデニムジャケット着てる」

『あー、あのさ』

隆平は気まずそうに言った。

『俺、実は埼玉にいるんだよね』

「……え゛!?」

思わず大声が出て周りの視線を集めてしまった。

『ごめん』

「なんで昨日のうちに言わなかったの?私どうしたらいいのよ…」

『それだけど、あとちょっと待っててくんね?』

「どういうこと?」

焦りは怒りに変わりつつある。

『まぁ待てばわかるって。誰かしら迎えに行くから』

「誰かって何?」

『落ち着けって。とにかく、誰が来るか楽しみにしてろよな』

「何言って…私、人見知りなんだから」

説明を求めようとしたところで隆平は勝手に電話を切ってしまった。折り返しても出ないため私はその場に立ち尽くした。



隆平の知り合いが来ても困る。そう考えながら隆平から連絡が来るのを待った。

週末で人が多いのもあって、近くで人が手を挙げては車に乗っていく。それを見るついでに周囲の車をそれとなく見てみる。けど、誰が来るのか聞かされていないから探す術もない。

溜め息をついた。コンビニで飲み物を買うため駅構内に戻ろうとすると後ろでクラクションの音が短く響いた。

振り向くとさっきまでいなかった水色の軽自動車が止まっていた。

見馴れた車に驚いていると窓が開いた。奥の運転席から顔を覗かせたのは理久君だった。

「夕夏ちゃん!!」

「理久君…」

「久しぶりだね!ここで何してるの?」

「友達とここで待ち合わせの予定だったんだけど、こっちにまだ来てないみたいなの」

「友達とは連絡とれた?」

「ううん。さっき電話で聞いて、途中で切れちゃったからどうしようもなくて待ってるの。理久君は?」

「俺は夕夏ちゃん迎えに来た」

「え?」

「ごめん、意味わかんないよね」

理久君は笑っている。

「隆平に頼まれたんだ」

「…隆平と知り合いだったの?」

「まぁね。とりあえず乗って」

「うん…」

ドアを引いて助手席に乗った。

「私、行く予定の所があるんだけど」

「聞いてるよ。エスポワールだよね?」

「それも知ってたの?」

「うん、隆平から頼まれた。今からそこに行くよ」

「ありがとう、でも、どうなってるの?隆平は?」

「隆平は来られないってさ。だから俺が変わりに今日は付き合ってもらおうと思って」

「うん…」

私は複雑だった。隆平と理久君が知り合いだったのは勿論驚いたけど、それなら隆平も先に言っといてくれればいいのに。

長野の見慣れた場所に来るだけで正直辛い。事情を知らない隆平にそれを思っても仕方ないのはわかってるけど、自分が行けなくなったからって共通の友達に代理を頼むのはやめてほしい。

車は動き出した。

「隆平といつから知り合いなの?」

「俺、前によくスキーに行ってたんだけどそんときに知り合ってさ」

「そうだったんだ。そういえば隆平、大学の時から時々こっちに来てたみたいだね」

「そうそう。就職してからは休みも合わなくて疎遠になってたけど」

「偶然だね」

「ほんとそれ。夕夏ちゃん元気にしてた?」

「うん。新しい仕事が結構覚えることいっぱいあって大変だけど」

「そうなんだ。どんなことしてるの?」

「最初は事務全般って聞いてたんだけど、WEB制作の人が1人抜けて私もその業務の一部を手伝うことになって。今はポップとか作ってる」

「へえー!すごい。そういうのって専用のソフトとか使うの?」

理久君は話題を広げてくれる。いつも楽しそうで変わらない。

隆平とのことについて聞きたいことはもっと色々あったはずだけど、タイミングを逃してそのうち何を聞こうとしてたのか忘れてしまった。

30分ほど車で走ると山に上がっていく入り口まで辿り着いた。鮮やかな緑に囲まれた道を通っていると心の奥にある感情が引き出されていく。

お祝いを言うために向かっているのにネガティブな感情と葛藤して私はさらに複雑な心境だった。

目的地へ近づくに連れて心拍が上がっていく。もうすぐあの場所に到着する。そしたらあの人と同じ顔をした恭也さんに会うことになる。

同じ顔………そうだ、理久君が恭也さんに会ったらどう思うんだろう。まずい気がする。

でも、私はもうその事とは関係なくなったんだった。あの人は私を忘れてしまったし、恭也さんは新たな道を歩んでいる。だから心配しなくてもすべては何事もなかったかのように進んでいくーーーーーーー

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