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追憶30

「蓮は?」

「今さっき手術室に入っていきました。捷さん、すみません… こんなことになってしまって」

私が謝ると莉奈ちゃんが前に出た。

「ちがうんです!私が恭也さんにぶつかって」

「…キョウヤ?」

捷さんは眉をひそめ、そして遥人君を見た。私は莉奈ちゃんの腕をそっと掴んだ。

「莉奈ちゃん、タケルの様子見てきてくれないかな。遥人君と一緒に」

莉奈ちゃんはどうしていいかわからないのか捷さんの顔を見たまま戸惑っている。すると遥人君が頭を下げて莉奈ちゃんを連れて行った。

「あの子達が一緒に行ってた友達?」

「はい。実はあともう1人いるんですけど、その人が気絶して倒れてしまって、別の部屋で横になってるんです」

「そうか。何があったか説明してくれる?」

「はい」

私は一部の内容を伏せて説明した。山の途中に友達が購入した物件がありそこへ遊びに行った。リフォーム中と聞いて蓮以外で手伝いをしていたときに脚立でバランスを崩して蓮を転倒させてしまった、と。

「私が充分注意するべきだったのに、本当にごめんなさい」

「わざとじゃないんだから、起きたことは仕方ない。同行しなかった俺にも責任はある」

その時、自分の携帯電話から通知音が鳴った。気になっていると捷さんが言った。

「いいの?」

私は軽く会釈をして携帯電話を鞄から取り出した。画面には莉奈ちゃんの名前があった。タップしてメッセージを見る。


 タケルさん起きたんですけど 恭也さんに戻ってます


思わず反応した。

「何かあった?」

「あ、いえ。すみません」

慌てて携帯電話を鞄に入れた。

捷さんは待合室のソファに移動した。少しして莉奈ちゃんと遥人君が戻ってきた。

「もう1人の友達は大丈夫だった?」

捷さんに突然聞かれて2人は私の顔を見た。

「はい、意識は戻ったんですけどまだ朦朧としてて、もう少しベッドにいるみたいです」

「意識が戻ってよかった。蓮の手術は長時間になる可能性がある。君達は帰ったほうがいい」

「でも」

「大丈夫。手術が終わっても中に入れるのは家族だけだし、今日何かをしてもらうことはできないだろうから」

捷さんは表情を和らげた。

「それに、あいつは友達を恨むようなやつじゃない。君達が手術のために何時間も拘束されることのほうが嫌だと思うよ」

「……わかりました。また状況を教えてもらえませんか?」

「うん、連絡するよ」

私達は待合室を後にした。エレベーターの前まで来ると莉奈ちゃんが言った。

「夕夏さん、恭也さんが部屋には来ないようにって言ってました。もし捷さんに姿を見られたら面倒なことになるからって」

「そっか。体は大丈夫なのかな」

「さっきナースコールしたんです。一応そのときも診てもらって本当にただの気絶だったみたいです」

「ならよかった」

「あとで連絡するって言ってました」

「わかった、ありがとう」

エレベーターが到着してから帰り道まで、私達はほとんど会話をしなかった。まだ明るい外を眺めながら心に不安が重くのしかかっている。



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