表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/97

追憶27

「いくつかの部屋は壁にクロスを貼るんだ。夕夏にはそれを手伝ってほしい。まずはこの部屋から貼ろうと思う」

タケルは長い段ボール箱を床に置いた。

「この中にロール状のクロスが入ってるから開封して広げてもらえるかな」

「わかった」

渡されたカッターナイフで箱を開けて床にロールを広げた。タケルはノートを見ながらメジャーを壁に当てて確認し、ハサミでクロスをカットした。糊がついている面のビニールを剥がしてから脚立に乗り壁へ縦に貼り付けた後、パテのようなもので押さえつけるとローラーを隅々まで転がし密着させた。

「部屋の壁を全部埋めるまでこの工程の繰り返し。上の方は僕がローラーを掛けるから、夕夏は残りのローラー掛けをやってくれる?」

「うん」

タケルはまたクロスのカットから順に手際よく作業をこなしていく。あっという間にクロスが貼り付けられ、タケルは持っていたローラーを私に手渡した。

「少し力を入れて掛けて」

「わかった」

ローラーを掛け終わると今度はタケルがクロスのあまり部分をカッターナイフで切っていく。タケルはまた脚立に乗り次のクロスを壁に貼り付け始めた。

その背中を眺めていて、目の前に当然のようにタケルがいることがとても不思議に思えた。そしてふとあの夢を思い出したーーーーー キミ、コノアイダノ ーーーーー

「タケル」

「何?」

「ずっと前にくれたピアス、大事に持ってるよ」

「……」

タケルは手を止めた。

「行ったほうがいいって言ってくれた幼馴染みの結婚式も、私ちゃんと行ってきたよ」

「そうなんだ。よかった」

「あのさ… マフラーって見てもらえたのかな」

タケルは何も言わず壁を向いたままだ。

「タケル?」

その時、携帯電話の音が鳴った。タケルのポケットから聞こえる着信音は暫く鳴りつづけた。ようやくポケットから端末が取り出されたときには音が止んでしまった。

「タケルさーん!」

遥人君が入ってきた。

「いま電話したんすけど」

「ああ、ごめん」

「ペンキもうすぐなくなりそうなんすけど、補充ってどこにありますか?」

「2階に置いてある」

「あっじゃあ俺取ってきます」

「たくさん物があって分かりにくいから一緒に行くよ」

「いーんすか?ありがとうございます!」

「莉奈ちゃん大丈夫なの?」

「はい!いま脚立に座ってます」

「そうなんだ。じゃあ安心だね」

「ちょうど休憩したかったみたいです」

遥人君とタケルはペンキを取りに行った。クロスの仮止めが途中になっているため私は次の分を切っておこうと思いクロスのロールを広げた。

突然、外から大きな音が聞こえた。気になってドアへ向かうと遥人君とタケルが登りかけた階段を降りてきた。

「タケル、今の音」

「うん」

外に出るとそこには散らばった資材に倒れ込んだ恭也さんと莉奈ちゃんの姿があった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ