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追憶⑯

実は今日、理久に晩飯誘われてるんだけど橋詰さんも行く?

宮園さんがトイレで化粧直しをしている間、柳瀬さんは冷蔵庫の前で言った。

行くならきっと車で送ってもらうことになると思って断った。

昼休憩が終わって柳瀬さんが再び外回りのため事務所を出ていくと、宮園さんは花火の相手とはどんな関係なのかと聞き始めた。楽しそうにしている宮園さんに経理の山下さんが視線を送っているけど本人は気にも留めていない。

みんな花火を見に行くことを騒ぎ立てるけど、私と理久君はそういう仲じゃない。

タケルに長野の山の中で何をしているのかメッセージで聞いた。夜に電話で話をして、その時に真由那さんが読んでいた本のことや恭也さんとのことを教えてもらった。真由那さんが病気だということは2年前タケルが長野を発った後に遥人君から聞いたけれど、その後の状況は想像していた以上に複雑だった。タケルは2人の夢を叶えるため頑張っているのに自分がタケルとのことばかり考えていたことを恥ずかしくも思った。

あっという間に週末が来て、深く関わりのある私達はやっと全員で顔を合わせることになった。



午前9時、遥人君に車を出してもらい莉奈ちゃんと一緒に病院から少し離れた場所で待機してもらった。私は病院へ青谷蓮こと倉前恭也さんを迎えに行った。

車椅子を押して待ち合わせ場所へ向かった。遥人君の車を見つけて近づくと、ドアが両方開いて2人は降りてきてくれた。

「夕夏さん、大丈夫でしたか?」

「ありがとう莉奈ちゃん。誰にも会わなかったよ」

「よかった」

恭也さんが2人に会釈した。遥人君は眉を顰め口をあんぐりと開けたまま恭也さんの顔を見ている。

「遥人!早くしないと誰かに見られちゃうかも」

「あ…うん」

莉奈ちゃんに促されて遥人君は後部座席のドアをスライドして開けた。

「どうぞ」

「ありがとう」

恭也さんはドアに掴まり勢いをつけて立ち上がった。私は補助をするため傍で胴を支えた。車体が高いことを心配したけど恭也さんは腕に力を入れてうまくシートに座った。車椅子を畳むと遥人君がそれを車のトランクに入れてくれた。

全員車に乗り込むと遥人君はすぐにエンジンをかけた。

「じゃ、出発しますね」

「ありがとう、お願いします」

恭也さんは落ち着いた柔らかな声で言った。

はじめてのうちは車内でみんな黙り込んでいた。社交的な莉奈ちゃんさえ戸惑っている。それはたぶん青谷蓮の容姿があまりにもタケルと瓜二つだからで挨拶する言葉に迷っているんだろうと思った。2人はバックミラー越しに恭也さんを度々見ると、やっとタイミングを掴んだかのように切り出した。


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