追憶⑮
テーブルに転がったウィンナーを拾って弁当箱のフタに乗せた。
「あーもう先輩わかりやすいなー」
宮園さんがそう言うと柳瀬さんは問いかけた。
「怪しいって、何が?」
「女の勘っていうか、先輩って彼氏できました?」
柳瀬さんは目をぱっちり開いた。
「そうなの?」
「違います」
「じゃあ、 気になる人がいるとかですか?」
「…」
「もうすぐ付き合えそうな人がいるとか!?」
宮園さんが段々と顔を近づけてくる。 柳瀬さんは観察しながらも箸を止めない。
黙り込んでおかずを口に運んでいると宮園さんはしびれをきらして言った。
「なんで教えてくれないんですかー!先輩ひどい!」
「橋詰さん、どうなの?」
突然柳瀬さんが興味ありそうに聞いた。 その笑みを見て気まずくなった。
「好きな人は、いるんですけど」
「えー!!」
宮園さんが叫んだ。
「誰ですか? この会社の人ですか?」
「声大きいよ、会社の人じゃないから」
「じゃあどこのどんな人ですか?」
箸を止めたままでいると宮園さんは何かを察した様子で視線を柳瀬さんの方に向けた。
「あー、そういえば前に柳瀬さんの家に言ったとき先輩達こそこそ話してましたよね」
「…」
「柳瀬さんも知ってる人ですか?」
「言えない」
「えーじゃあやっぱり柳瀬さんの知り合いなんだ。あ、柳瀬さん笑ってる」
「いや、橋詰さんがこんな顔するの見たことないなって思って」
満足したのか宮園さんはようやく箸で大きなチキン南蛮の切れ端を掴んだ。
「そういえば、宮園さんは彼氏とどうなの?」
「私ですか? そりゃもうラブラブですよ〜。今度花火大会行くんです」
「それって月末のやつ?」
「そうですよ。 あれ、もしかして先輩もその人と行くんですか?」
話を逸らすために振った話題が自分の首をしめることになってしまった。
「行かないよ」
「えー絶対嘘だぁ。その人と行くんですね」
「その人とじゃないってば!」
2人は固まって私を見た。
「だから、その… 一緒に行くのは友達で」
「友達って男ですか?」
「そうだけど」
「先輩って…」
誤解が生まれそうなこの空気が嫌で慌てて柳瀬さんに言った。
「花火に行くのは埋久君となんです」
「理久と?」
「はい、理久君が誘ってくれて。私こっちで友達少ないからだと思うんですけど」
「そうなんだ?まあ、理久もイベント事が好きだからな」
宮園さんはすかさず聞いた。
「え、柳瀬さんその人知り合いなんですか?」
「うん。でも橋詰さんがいい感じの相手とは別の子だよ」
「そうなんだー。…って先輩、やっぱりいい感じの人いるんじゃないですか!」
柳瀬さんはいたずらに笑っている。
「もういいじゃん。お弁当冷めちゃうよ」
「先輩ほんと秘密主義ですよね〜。進展あったら次こそは絶対教えてくださいよ」
「わかった」
宮園さんの質問攻めが終わり、やっとゆっくりご飯が食べられることにほっとした。




