追憶④
「夕夏、あんた買い物してこなかったの?」
「後で行く」
「えー?もう、絶対あとで行ってね」
「わかった」
重い足取りで階段を上った。部屋に入って真っ先にベッドへ倒れた。
どうしてタケルは喜ばないんだろう。やっぱり、入れ替わってるって言えばよかった?………
どう説明すれば伝わったのか、今更繰り返し考えた。しばらく枕に伏せっているとケータイが鳴った。
ーーー莉奈ちゃんだ。
「もしもし」
『もしもーし!お久しぶりです』
「莉奈ちゃん、元気いいね。どうかした?」
『大学が休みで、最近夕夏さんに会ってないから会いたいなーと思って電話しました』
「そうなんだ、ありがと」
『寝てました?』
「ううん、寝てはないんだけど」
『…なんかあったんですか?』
急に感情が込み上げて、それを隠すようにとりあえずベッドから起き上がった。
「なんでもないよ」
『ぜったいなんかありますよね』
「ううん、大丈夫」
『えー?隠さないでくださいよ。私、こんなだけど夕夏さんのためなら力になりますから!』
「……莉奈ちゃん、実は」
時々涙を拭いながら蓮とタケルについて話した。莉奈ちゃんは言葉が少なかった。そして、話し終える頃に興奮した声で言った。
『夕夏さん!私が何とかしますから安心してください!』
「なんとかするって、どうやって?」
『任せてください。せっかくどこにいるかわかったのにまた会えなくなるなんて、そんなの苦しすぎる』
莉奈ちゃんはとにかく任せてほしいと言って電話を切った。ぼんやりしているうちに明日は花絵の実家に行く予定だったことを思い出した。
「夕夏ー!ちょっと降りてきてー」
1階から聞こえる声に応じて階段を下りていくと玄関に隆平がいた。
「おっす」
「あれ、私連絡したっけ?」
「いや、連絡来てはないけど。明日花絵んとこ行くんだろ?さっきおばさん言ってた」
「うん。隆平も呼ぶつもりだったんだけど、ちょっと立て込んでて」
「なんかあったのか?」
「ううん、もう大丈夫。隆平明日どうする?」
「俺も行くわ」
「じゃあ2時に花絵の家ね」
「おっけ」
「っていうかなんで隆平うちに来たの?」
「あのさ、ちょっと相談があるんだ」
「何の?」
「ちょっと部屋あがっていいか?」
「大丈夫だけど。あ、私買い物行かないといけないから歩きながら話す?」
「そうだな」
「鞄取って来るから待ってて」
「うん」
再び階段を上りながら莉奈ちゃんの言葉を思い出した。そして、2年前の別れの日が頭に浮かんだ。あの日からずっと自分に言い聞かせてきた。莉奈ちゃんの声が胸に巡っている、まだ諦めなくてもいいと言ってくれる人がいることにやっと嬉しさが込み上げた。




