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再生⑥

「その主人公はね、田舎暮らしが嫌になって上京してフリーターをしてたんだけど、友達ができないことが悩みだったの。見た目が地味だから駄目なんだって思ってメイクするようになって、服装を変えて、夜の街をぶらぶらしていると派手な女の子達に声を掛けられて遊ぶようになった。でも、いつの間にか寂しさが増していって、友達に会っても心の隙間が埋まらなくなってしまうの」

真由那は情景を描くように宙を見つめる。

「ある時、その子が橋で川を見下ろしていると後ろから声がして、振り返ると見知らぬおじいさんが立っていた。おじいさんはその子に言うの、どうして若いのに死のうなんて考えるんだって」

「え、飛び降りようとしてたのか?」

「ううん。おじいさんの思い違い」

「なんだ」

「でも、その子は誤解を解かずに今思っていることを素直に話したの」

「寂しいって?」

「うん。自分が求めてたものが何なのかわからなくなったって感じかな。それからおじいさんは言うの。使ってない別荘があるから、死ぬ前にそこでゆっくり過ごしたらどうだって」

「ドラマみたいだな」

真由那は笑った。

「面白いこと言うのね」

「どういうこと?」

「だって架空のお話なのに、ドラマみたいだって」

「…そうか、そうだよな。俺、あんまり小説とかは読まないからさ。で、続きは?」

「別荘の鍵を渡されて、休みの日に1人で行ってみるの」

「それが言ってたログハウス?」

「そう。中は広々したスペースで、ハンモックや大きな本棚があって、その子はそこで本を読むの。それがきっかけで後々そのログハウスは喫茶店になるっていうお話」

「へえ。だからログハウスが気になったのか」

「うん。展示会に飾ってあった絵は小説と無関係なんだけど、その作家さんが描くいくつかの絵がまるでその物語を知ってるかのような構図になってるの。それで気に入って、どうしても行きたいって母に我儘を言ったの」

「そうだったのか」

「行って正解だった。だって、あの日恭也に出逢えて今とても幸せだから」

真由那は可憐な笑顔を見せた。俺も幸せだ、そう言いたかった。でも照れくさくてその笑顔を見ているだけだった。

「恭也、この間のお正月は実家に帰ったの?」

「ああ、帰ったよ」

「よかった、去年は帰れなかったって言ってたから。家族の人達、嬉しかったでしょうね」

「うん」

「この体が元気になったら、一度お会いしてみたいな」

「俺も、自慢の彼女だって紹介したい」

「本当に?」

「本当だよ」

「……どうしたの?」

「え?」

覗きこむ真っ直ぐな瞳に心の内を悟られないよう、俺はとぼけた顔をして見せた。



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