再生③
何があった?……
コンビニの新聞売り場で今日の日付を確認した。あれから2年も経っている。
恭也の身に何が起きたのか知る為にもまずは家に帰ったほうが良い、そう思い電車に乗って長野駅へ向かった。
新幹線の乗車券を購入し、夕方4時すぎには東京に着いた。
僕にとって東京は初めての土地だった。道が全くわからず、また交番を探して尋ねることになった。
恭也の家は都心にある中央病院の近くだった。建物は以前住んでいたハイツよりも古びた見た目のアパートだった。
階段で3階まで上がり部屋番号を確認した。鍵は持っていない。
試しにドアノブを回し引いてみるとドアはすんなりと開いた。リビングには4人掛けのテーブルがあり、ノートパソコンが置いてある。
奥の部屋は6畳ほどの広さで腰ほどの高さの本棚と座卓があるだけだ。壁には部屋の雰囲気に合っていない絵が飾られている。
洗面所で手を洗い、早速髭を剃った。もう二度と僕という人格は目覚めないと思っていた。深い眠りにつくまでにそんな感覚があった。
何のために目覚めなければならないのか。僕が僕としての人生を手に入れられないなら、ただの苦しみでしかないというのに……
携帯を探そうとベッドの下に手を入れると何かが触れた。引き出すとそれはノートだった。かつて恭也と意識が入れ替わる度に書いていたあのノートとは違うものだ。
開いてみると日記が綴られていた。真由那さんについて書かれている。最後に書かれた部分を探そうとページをめくる途中、黒いマジックで大きく書き殴られた文字が目に飛び込んできた。
俺の夢は死んだ
その文字はひどく歪んでいて、苦しみが伝わってくるようだった。最後の日記にはこう書かれていた。
2月17日
真由那にやっと転機がきた、肝臓の移植手術が決まった。
最近は数値も安定していてこの調子なら手術はうまくいきそうだと言われたらしい。
希望が見えてきた、俺も早くあれを完成させないとな。
ふと思い出した。あの墓に刻まれていた名前は確か、川崎だった……
恭也が変わってしまったのは、きっとそういう事なんだろう。何が起こったのか調べるため日記をいちから読み進め、布団の中にあった携帯を充電して開きメッセージを遡った。
やっぱり真由那さんは亡くなっていた。命の儚さに涙が溢れた。傍にいた恭也はどれほど辛かっただろう。苦しみのあまり自分自身を閉じ込めたくて僕を呼んだのかもしれない。
部屋で暫く考えた、そして気になっていた“あれ”について調べることにした。僕は真由那さんに何もしてあげられなかった。きっと真由那さんは恭也を心配しているはずだ。このタイミングで僕が目覚めた意味がわかった気がした。




