再生②
なんだろう、この感覚は。
眠くて、心地よくて、懐かしい………
でも、顔を上げると目の前には墓があった。どうして僕は地面にあぐらなんてかいてる?
周りを見渡すと墓ばかりある。立ち上がってポケットに手を入れた。触れたものを取り出すと四つ折りの財布だった。そうか、また意識が恭也と入れ替わったんだ…
ここがどこなのか全くわからない。一旦家に帰ろうと思って携帯電話を探した。
携帯がない。そして徐々に思い出した。最後に意識があったのは新幹線の中だった。夕夏……
財布を開いて免許証を出した。住所が東京に変わってる。
墓地を出て道行く人に交番の場所を聞いた。何人かに声を掛けた、でも皆僕を不審がって避けて行く。仕方なく道なりに歩いていると交番の赤いランプを見つけた。
中には警察官が1人いた。ドアを開けて入り、道を教えてほしいと言った。免許証の裏に更新された住所を見せると警察官はひっくり返して顔写真と僕を見比べた。随分疑った様子だ。
「なんで家がわからないの」
「酔っぱらってて目が覚めたら知らないところにいたんです。携帯もなくて」
警察官はまた僕を頭からつま先まで見ると納得がいったというような顔をした。そして免許証の裏を見て聞いた。
「…東京に帰るの?」
「はい」
返事をしてから質問の違和感に気が付いた。
「酔っぱらってって言うけど、ここ長野だよ?」
予想外の言葉に唖然とした。でも、あまり変な反応をすると質問が増えそうだと思った。
「はい。東京に帰るんですけど、表に書いてある長野の住所に寄りたくて」
「…なんだ、それなら最初からそう言ってくれないと」
「すみません」
「交番出て右に真っ直ぐ行って、3つ目の信号を左に曲がって、また真っ直ぐ歩いたらコンビニがあるからそれを右。覚えられる?」
「はい、大丈夫です」
「コンビニを曲がったらすぐ線路が見えるから、その駅から白枝駅まで行けるよ。そこからはわかるでしょ?」
「はい。ありがとうございました」
警察官はもう一度顔写真を見てから免許証を僕に返した。
教えられた通りに道を歩きながら、さっき聞いた駅の名前を懐かしく思った。新幹線で東京に向かったはずなのにどうして長野にいるんだろう。そういえば、あれから何日経った?―――――
コンビニを見つけて立ち寄った。財布を持っていたことが幸いだ、クレジットカードも入ってる。トイレに入ろうとドアロックを見ると誰か入っているようだった。先に買い物しようと踵を返すと鏡に映った自分が見えた、そして目を疑った。
髪はボサボサ、無精髭を生やして顔はうっすら汚れている。思わず免許証を出して見比べた。そしてあの警察官の反応は当然だと思った。




